68 転生院管理局

 その日、ポロ、メネド、アザゼルは地球のサダム区域を視察に訪れていた。


 三人の前に立ち街を案内する転生院管理局、サダム区局長オフェストロ。


 隙間なく滑らかに敷き詰められた乳白色の石壁が、日光を浴びてその白さを際立たせている。


「この白い建物が私たちのオフィスです」

 後ろを歩いている三人を振り返るオフェストロ。

「順調そうだな」

 満足そうに笑みを浮かべるアザゼル。

「ありがとうございます。新しい身体を手に入れた地球人にも、想起術と転生術の訓練を行っていますので、術者の数も増えています」

 

 建物の周囲には、規則正しくナツメヤシが植えられ、葉が青空に向かって伸びている。一行はナツメヤシの並木を抜け、門をくぐり敷地内に入った。


 しばらく歩き二階の局長室に入ると、ムトが書類の整理をしていた。



「彼が稀代の新人か」

「ええ、生意気ですが、術には長けています。この前一人で50人転生させました」

「ほう。名前は?」

「ムト・ガリアです。ムト、ちょっと、こっちへ」

「ムトガリアです。よろしくお願いします。」

 ムトはかしこまってお辞儀をした。

「想起術も得意だと聞いているが」

「はい」

「新しい身体を手に入れたほとんどの地球人は、奇形体の中にいたころの記憶を失っている。君のような能力の高い術者が沢山いてくれると心強いよ。今後は新人の教育にも力を入れてほしい。期待しているよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る