67 転生術者
召集された転生術者がひしめく、死海南部のサダム区域。
「ああ、もう疲れた… もう駄目だ!」
「何を言っている?! まだ20人しかやってないだろ。今日は50人はやらないと」
叱責を受けた少年は、肩を落とすと額の汗を手の甲で拭い、
「は?! バカ言え!! 役職者クラスの生産性を俺に求めるのかよ! 勘弁してくれよ!」
「そんなこと言ってられないだろ。皆だって頑張ってるんだ」
「俺が50人も転生させるなんて。2日3日寝ずにやらなきゃ無理だよ」
男は食ってかかる少年の顔を真正面から見つめ、何も言わずただ視線を交えた。
無言の時間が流れる。
「え、まさか。そんな。嘘だろ。勘弁してくれよ!」
無言の意図に気付き、声を上ずらせる少年。少年の悲鳴がサダムの上空に木霊した。
§§§
「お疲れ様」
看護師モナシュの言葉を無視して、野営病院の入り口を通り抜ける少年ムト。誰とも言葉は交わさず、今にも意識を失いそうな睡魔に抗いながら、ベッド室までたどり着くと、気を失ったかのようにベッドに倒れこみ、深い眠りについた。
「火星統制局の人が視察に来るらしいよ」
誰かの声がする。火星か… いつになったら帰れるんだろう。霞がかった意識の中でムトは故郷を想った。
ゆっくりと上半身を起こし、目一杯、背伸びをするムト。
「ごめん。起こしてしまったようだね」
「誰が来るんだ。統制局から」
ムトは、立ち去ろうとするモナシュと、もう一人の看護師を呼び止めた。
「詳しいことはわからないけど、いつもの3人じゃないかな」
その言葉を聞いて、起こした体を横たえ、再び眠りにつくムト。
モナシュと看護師は、顔を見合わせ苦笑いをすると、スタッフルームに戻っていった。
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