80 白昼夢

「あの病院でさ。いろんな人と知り合いになって、俺みたいな悩みを持ってる人って意外と、多いんだって初めて知ったよ。皆、変に思われるのが怖くて口にしないだけだ。でも、抑えられなくて言葉にし始めた途端、出る杭は打たれる」


「でもそのおかげで、私はコウに出会えたよ」


 照れ臭そうに頭をかく公寿郎。


 公寿郎は、あぁ、とか、うぅ、とか次の言葉を選ぶのに困りながら、「俺何を言おうとしてたんだっけ」と何度も自分に問いかけた。


「……そうそう。言いたかったのは俺みたいに『この星を何とかしなきゃ』『悪い奴がどっかにいる』って奴が結構多いっていうことだ。だから、みんなで力を合わせて、この星を変えてやろう。そう思うんだ」


「賛成!」

 乃希は力強く頷いた。






 その日の夜、夢を見た。


『ルーシェ』


 白銀の長髪の男だ。そいつは何故か俺をルーシェと呼んだ。


『俺を……見…つけ……て…くれ』


 何度もそいつに話しかけようとするが声が出ない。


『頼む』


 表情を変えず、その男はただひたすら、自分を探して見つけ出すようにと言った。




§§§




 翌日

 学校の帰り道 マクドナルド渋谷東映プラザ店 店内


「私もおんなじ夢見たよ」

 飲んでいたシェイクのストローから口を離し乃希が言った。口の中に放り込んだハンバーガーをのどに詰まらせ、咳き込む公寿郎。

「ホントに?」

「でも、どこにいるんだろうね」

「どこにいるって…そもそもただの偶然で、意味なんて、何もないかもしれないよ」

「ううん。こういうことには必ず意味があるの」





 目の前にいた乃希の姿が消えた。場所も、いつの間にかマクドナルドの中ではなくなっている。

 

 なんでここに? 時々、空間自体にノイズが走るような錯覚に襲われる、白いモヤがかかった空間。昨日見た夢の中と同じだ。


「夢魔法だ」


 突然、目の前に白銀長髪の男が現れて言った。

 

 驚き後ろに飛び跳ねる公寿郎。


「だ、だ、誰だ! な、なんなんだ! これは!」


「魔術師が作った固有空間の中に他人の意識だけを召喚する魔法だ。

この科学というものが発達した厄介な連中がいる世界では、盗撮や盗聴など、諜報員、工作員の手から逃れることは容易ではない。そこで昔の魔法を引っ張り出してきたのだ。

 今回は、お前以外にも客人を呼んである」

 

 白銀長髪の男が右手で指差した先には、乃希とその他に3人の男子がいた。

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