44 火星管理統制局 管理本部室

 壁一面に並んだモニター。それらはファゼロに設置された7万台の監視カメラの映像を映し出していた。分割された画面に映し出される街頭、オフィスビル、繁華街。それらが定期的に風景を映し変えていく。


 その中の一つに映し出された光の波。

 

 路上に溢れ出しながら人々を飲み込み消し去っていく。波の源流はホテル、ハイアットクランベルの方角だ。

 

 監視カメラの再生映像を繰り返し確認するルフレルとイリシス。

「到着した」

 アザゼルの声がルフレルの頭の中に響く。




§§§




 統制局局長アザゼル。捕獲戦闘部管理部長、康太郎。他、実動部隊299名がハイアットクランベルの半径500メートル外縁を包囲した。人間で構成されたファゼロ隊と、天使の惑星エアから派遣されたエア隊の混合部隊だ。


「待機」

 無線を飛ばすアザゼル。

「ルーシェはまだか」

「先ほど接触しました。今向かっています」

 アマナの声がアザゼルの頭の中に響く。


 何かがホテルの最上階から飛び出した。

「総員。警戒を怠るな。こちらからは攻撃を仕掛けなくていい」


 ホテルの上部に浮遊するそれから、監視カメラに映っていた光の粒が零れ始めた。

「ファゼロ隊は防護障壁を展開」


 空中に漂う光の粒がゆっくりと部隊に向かって降下してくる。光粒こうりゅうの特徴は監視カメラの画像からわかっていた。むやみに動かないほうがいい。あの術は天使には効かない。複数の人間に限定して使う戦術だ。


 ホテルの上のそれは静止したままだ。


「到着しました」

 振り返るとアマナとルーシェがいた。

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