105 喪失

 地球を覆った青白い魔力の層は膨大な量の陽子と電子、超強重力に変換された。


 大量に降り注ぐ陽子と電子はすべての大気を電離させ、電離した大気は大気圏上に発生した超強重力によって宇宙空間へと放出された。


 地球の大気は消失し、発生した重力によって地上にあるあらゆるものが一気に上空に舞い上がった。


 雲は消え、高層ビルや人工物の残骸、山脈や地表から剥がされた土砂や岩石、樹木、海水が空に浮かんでいる。自分たちの知る姿から、かけ離れてしまった地球を呆然と公寿郎たちは見つめた。


 肉体を持たない公寿郎達は涙を流すことはできなかったが、強い悲しみと絶望の波長が、波紋となって漆黒の宇宙を駆け抜けた。

 クロノスの搭乗員の一人は泣き叫び、計器類を両拳で何度も叩き蹴り飛ばしたが、残りの二人に取り押さえられた。

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