32 殲滅

 イピテルとロボルガリ達は肩を叩きあって抱き合った。


「それで、この土地の謎を知りたいんだよな?」

 アザゼルに問いかけるイピテル。

「エル家がこの土地で何をやっているかを知りたい」

「上でも言ったが殺戮と凌辱だ。見たんだろう。人間の血を浴びて踊る赤い天使を」

 予想していなかった言葉に、アザゼルは言葉を失う。

「そうか。そこまで踏み込めて調査できなかったから、私を呼びに帰って来たんだったな。私も、傍若無人なエル家の人間とミカエルを見かねて、本格的に対処し始めたら上に戻された。厄介に思ったんだろう。新しい管理者を就けて、今度は記憶を消して戻すつもりだったらしい」




§§§



 イピテル、アザゼル、ロボルガリ達はモレンナ山脈を越えて赤い空へと向かった。


 麓からは見えなかったが、赤い霧雨が大地に降り注いでいる。

「せっかくおとなしい姿に戻ったのにな。しばらく、またこの姿ともおさらばだ」

 そう言うとイピテルの体が膨らみ始め、六本の腕が元ある腕の付け根から生え、光輪が頭上に浮かび上がった。

 皆手を繋ぎ飛翔していたが、イピテルだけ手を離し、空を埋め尽くす赤い天使の群れへと一人で近づいていった。 


 手を広げ空中で大の字の姿勢を取るイピテル。体中が光り、円状の光がイピテルの体を中心にして広がっていった。巨大な円が形成されるとその円がそのまま柱となり赤い空へと伸びていった。


 口々に怒号を上げ、イピテルのもとに殺気立って飛翔する赤い天使の群れ。時すでに遅く、巨大な光の火柱が、一瞬にして赤い天使の群れを焼き払った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る