118 仕事終わりのルーティーン
どれくらい時間が流れただろう。
不思議と疲れはない。
新入りがいきなり大量の重力子を生み出したのを見て、周りの魔術者達も対抗心を燃やし、いつにも増して大量の重力子を放出している。
「そんなに飛ばすと、すぐにばてるぜ」
数十メートル先で、一際大きなうねりを生み出している魔術者がポコに向かって言った。ポコはその魔術者を横目で見ると、すぐに視線を前に戻して魔力の創造に集中した。
ポコの周りで重力子を生産している魔術者達は、同じ陶器体を持っていても、それぞれ微妙に差異があった。
ほとんど見分けがつかない、全く同じに見える陶器体の割合の方が多かったが、それに混じって、特徴的な陶器体を持つ魔術者が何体か見受けられた。
ポコに話しかけてきた魔術者は、額部分から二本の角を生やし、頬や口の部分にギザギザした模様が浮き彫りになっていた。たいていの陶器体の頭部や顔面は、のっぺりしていてこれといった特徴は見いだせない。
「今日はこれでお終い。お疲れ様」
オグノマリアの声が頭の中に響く。突然の声にビクッと体を震わせるポコ。
続いて笑い声が脳裏に響き渡る。
「もう! 確信犯ですよね。絶対。姿も見せずに卑怯ですよ」
「だから、俺に姿なんてものは最初からないんだって。いや、それは違うか。えっと… 外在化者になってどれくらいたったんだっけ?」
「10年」
背後の声に振り返ると、さっきポコに話しかけてきた二本角の魔術者がいた。
「自分の魔力で外在化した人とは違うんだから、もったいぶって格好つけたって無駄だよ」
オグノマリアの声が聞こえない。
「あれ? どっか行っちゃったのかな目に見えないってホント不便だな」
「それはあいつにとって都合がいいってことなんだけどな」
二本角が後ろに飛び下がった。かと思うと横に飛び跳ねたり、しゃがんで姿勢を低くしたり、まるで目に見えない攻撃をよけているようだ。
時折、手の平から雷電が放たれ眩しさでポコは目を覆った。
「何かと戦ってるんですか」
二本角は答えずに、ひたすら身を翻しながら雷電を放った。
「アチチチ、痛っ! 痛い!!」
オグノマリアの声がする。
二本角は身を翻すのをやめ、両手から放った雷電で何かを捕らえたようだった。
「今日はこれくらいにしとこうぜ」
「痛っ痛っ! 早く止めろよ!! 外だったら絶対負けねえんだからな!」
「わかってるよ」
そう言って二本角は雷電を両手から放つのをやめた。
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