77 誰も信じてくれない

 四本の光柱が天を貫く。


 発信源は火星地下都市。


 莫大な量の魔力が注ぎ込まれ、永遠体の死んだ大脳が機能を回復し、魔力を抜き取られ無力化されていた本体も目覚めた。


 咆哮が火星の大気を切り裂く。



 高速で回転を始める、エア、火星、地球の上空に現れた巨大な黒光の魔法陣。超強重力が成層圏に発生し、人も川も海も人工物もすべての物が空へと舞い上がっていく。


 上空に集まったすべての海水は、三つの惑星を超高水圧で洗い流した。





§§§





 窓から見えるいつもと変わらない風景。


 ここから出られる日なんて来るのだろうか。誰も僕のことを信じてはくれない。


『この星は悪い奴に支配されてる』『記憶を消されて閉じ込められている』

 生まれた時からそんな強迫観念に囚われていた。


 小さい頃から今まで事あるごとに、そんなことを言っていた為、親や周りの友人、学校の先生からは変人扱いされていた。



 そしてとうとう高校二年生の夏、親に精神病院に入れられてしまった。


「またなの?」

 声のする方を見ると、開いたドアの入り口に看護師の高坂さんが立っていた。

「8時半は薬の時間って何回も言ってるでしょ」

「飲みたくない」

「ダメ」

 

 高坂さんに引っ張られ、ナースステーションの近くで薬を受け取るために並んでいる列に加わった。

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