115 移し替え

 検査官は診断結果に一瞥をくれると、セキュリティーゲートを通れと手でジェスチャーした。


 その先にはまた行列が広がっていたが、その流れは大まかに四つに分かれていた。エンジニア、科学者、魔術者、魔術開発者の分類だ。


 検査官の指示通り、右から二番目の魔術者の列に加わるポコ。

 列の先頭には防護服を着た者や、真っ白い陶器のような体をした者がいた。


 その白い体は光沢を放ち硬く、青く透き通った双眼は、列に並んだ受刑者の心の深奥まで見透かしているようだった。

 頭髪はなく、体の関節部分や、輪郭部分には赤く光る筋が伸びている。それらの筋は別の筋と交わり、体のところどころで幾何学模様を織りなしていた。


 防護服を着た人間も白陶器体の人間も、姿は違えど、転生術者であるらしかった。


 順番が回ってきたポコが白陶器体者の前に立つと、白陶器体者はポコを肉体から引き離し、用意されていた法術体に移し替えた。その法術体は白陶器体者の肉体と同じで、温度覚と痛覚が断絶しており、摂氏一万度まで耐えられる構造になっていた。


 特に指示もなく、自分と同じように法術体を与えられた受刑者の列の流れに加わりポコは再び歩き出した。


「おい新入り」

 突然、頭の中で声がして立ち止まるポコ。後ろを歩いていた受刑者がぶつかり舌打ちする。

「気をつけろよ。うすのろ」

 辺りを見回すポコ。

「外在化者も知らねえのか? とんだド田舎から来たもんだな。まあ、今のお前にはいくら見まわしたって俺は見えねえよ」

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