155 命名

 東京か。


 好きだよね。その名前。


 何度でもつけるんだよ。これはただの名前じゃない。シンボルだ。


 この名前を付けるのは何度目なんだろうね。


 覚えていないよ。何回も何回もつけた名前だ。僕が最初につけた街の名前。それが東京だ。文明が何度滅ぼうと、人間が何度絶滅しようと、何度でもそれらは蘇り、その度にこの名前をつけるんだ。



 青い空、白い雲、当たり前の毎日。

 突然の終わりには、苦しみを伴わない。

 ガンマ線バーストの照準が自分の住んでいる惑星に向けられているなど、誰も気付く者はいないだろう。

 惑星の住人は、何が起きたのか理解することもなく、痛みを感じる隙を与えられることもなく、消えた自分の身体と惑星を見下ろすことになる。


 だから今この青空と、幸せそうに浮かぶ真っ白な雲にとても感謝しているんだ。

 そして僕はこの街に東京という名前を付けた。


 何度目になるのだろう、と君は尋ねたね。

 僕は覚えていない。あまりに膨大な数に上るだろう。この名前を付けるたびに希望を込めた。


 これが最後の命名になることを切に願う。

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