第六章

152 葉雫

 体を与えられた。人間になった。もう破壊せずに済む。

 あの三人には感謝している。


 森林の中で私は暮らしている。


 100㎞四方、私以外に人はいない。

 自分で作物を育て、川で魚を釣り、時々、兎や鹿などを狩る。


 時折、偵察員が飛翔術を使って、上空を通り過ぎていくのを見かける。

 何十年もたって体がだめになれば、新しい体が置いて行かれる。


 記憶は連綿と続いていく。


 叶うならば、記憶を消して忘却の彼方に自我を追いやり、永遠の無意識に埋没することを望む。

 その願いは聞き入れられなかった。


 罪を噛み締め、苦しみと共に生きろ。それがお前の償いだ。

 そう言ったのは、三人の内の誰だっただろうか。うまく名前が思い出せない。


 雨上がりの山々と森は、艶やかな雫で太陽の光を反射し虹の煌めきをより一層際立たせていた。

 霧が出始めている。


 夕闇が、虹の煌めきと、雲の切れ間から差し込む光を塞ぎ、夜がやってきた。

 山菜を適当な大きさに切り、味噌を解いたお湯で煮る。川魚をコンロで炙り塩を振る。


 いつもと同じ、変わり映えのない食事。



 玄関の扉を叩く音で目が覚めた。

 台所のテーブルに顔を突っ伏して、いつのまにか寝てしまっていたらしい。

 ここに来る者と言えば、あの三人のうちの誰かだろう。

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