89 缶ジュース

「みんな、外在化はできるようなったか」

 5人とも頷く。

「でも、思ったように動けないし、飛ぶ速度も遅い。これじゃ、まだまだ戦えない」

 ビニール袋から缶ジュースを取り出し蓋を開ける閃。

「そもそも、外在化した状態だと、攻撃がすり抜けて効かないんじゃない?」

 私にもちょうだいのジェスチャーで閃からジュースを受け取る乃希。

「アザゼルさんも飲みます?」

 軽く首を振るアザゼル。閃が一人一人にジュースを手渡すと、部屋中にカシュッという乾いた音が鳴り、それぞれの喉を潤した。

「彼らをみくびってはいけない」

 アザゼルは乃希を諭した。

「ところで、今のところ、衝撃波を放てるのは眞村だけかな」

 公寿郎がだるそうに右手を上げた。

「ほう。さすがだね。少し記憶を回復しただけで出せるようになるなんて。万が一、この6人で戦闘になった場合、攻撃の要になるのは星坂だ。よろしく頼むよ」

 皆がジュースで一息つくのを待つと、アザゼルは両手をパシッと合わせた。

「よし、じゃあ今日は、合同練習と行こうか」



 皆、身体から抜け出し、肉体を仙寿の部屋に横たえると、屋根をすり抜け上空へと飛んでいった。

「前から思ってたんだけど、アザゼルさんの神出鬼没能力って、どうやってるの。今も、部屋に体を置かず直接ここに来たよね」

 いち早く体から抜け出し、上空を飛び回っている仙寿。

「これは君たちには早いよ。君たちの記憶を回復させるずっと昔に、長い歳月をかけて得た能力だ。自らの肉体を非物質化することも物質化することもできるが、体得するには時間が掛かる。今は優先順位が低い。とにかく今は、より早く飛び、より強い衝撃波を打てるようになることが先決だ」

 そう言うとアザゼルは彼らを指導し始めた。

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