第71話 よしなかさん
夜中の騒音の件は収まるどころか、ますます酷くなっていった。夕方5時から明け方の6時までその銃声のような爆竹のような音が
3分か、5分おきに1度鳴るようになっていた。
大家さんに相談しても、町内の方に相談しても、役場に相談しても、ここの物件を紹介してくれた町の不動産屋さんみたいな所にも相談したが、どこも駄目だった。
それどころか、役場にイノシシ狩りの騒音じゃないのかと言った事と、農道に立て看板を出した事で、道を塞がれたと言って猟師の(よしなかさん)が激怒されたらしい。
町の不動産屋の所にも「何であんな他所者を住むことを許可したんだ!」とか、「町の皆で◯◯住民が出て行ってほしいって他にも言ってる人がいる、署名集めたから追い出して欲しい」とか、大家さんの所にも、よしなかと言う人は抗議の電話を入れたと後から聞かされた。
後日不動産屋から連絡が入り、大家さんも含め集まって話し合いになった。事実確認をされ、よしなかさんの怒りがどうやらおさまらないので、農道に出した看板は道を塞がず、脇によける形で、出す事になった。
大家さんからは、今回の件はよしなかさんが一方的には悪いのだけど、それとは別に、目の前の崖崩れの工事を再開してもらうように来年依頼したので、宜しくと言われた。
「えっ、それは困るんですけど。まだ3か月しか住んでないんですけど、工事入ったらあそこには住めないんですよね」
「ああ、悪いのだけどいつまでも崖崩れのままにはしておけないから」
「でも、契約した時しばらくは工事しないって言ってましたよね」
「すまないが、了承してほしい」
と言われた。確かに、崖崩れで工事の件は私の方から確認していたが、【しばらくはやらない、重要なメインの公道を先にやるはずだからここが工事に入るのはずっと何年も先だ】と聞いていた。
――愕然とした。引っ越しして3か月だ。まだ前の家の引っ越しも片付いていなかった。ここで生活するために、ガスコンロとか食器棚とかいろいろ必要な物も揃えたばかりだった。ここの家に住めるとしても、後数ヶ月という話だった。
数週間後、近くの山で今度は「ド~ン、ド〜ン、ギリギリギリ、カンカンカン」何事?
尚文と、私は音のする方に見に行った。200メートルくらい歩くと、別れ道があり細い山道の方から音が聞こえてきたので、さらに奥に進んだ。
開けた道に出た。ダンプカーと木が伐採された跡が広がっていた。なんだこれは。山の中に道が作られていた。状況が掴めないが、とりあえず戻り、この音が今後いつまで続くのか知りたく調べ始めた。
調べて分かった結果は、電柱や配電線、送電強化の為の新ルート建設の電柱を建てる為の伐採工事だった。数年前から計画されてたもので、たまたま私たちが住んでる年に当たらなくてもとまた苦い思いをした。その日から工事は何年も続くと言われた。
ここにはいられない絶望的になった瞬間だった。
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