第40話 新たな騒音

 今は京介の買った中古の一軒家に住まわせてもらっていた。

 尚文と、京介と、猫と私の穏やかな生活が始まったのもつかの間、4年間の溝はそう簡単には埋まらなかったのだ。

 私は京介となんとなくギクシャクしはじめていた。

 前の家を離れた理由が、騒音だとは言え、京介は私が家を出た事を快く思っていなかった。

 今回は行き場がないと思い同情で呼んでくれたらしい。

 尚文は、ゲーム機がなくなった事、データが戻って来なかった事を引きずって、京介を責めていた。

 そんな矢先のことだ。


―早朝5時30分―


「ドーン、ドーン、ドーン、ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン……」


 尚文は飛び起きて、私を起こしにきた。


 「ちょっと、これ、何の音」


 私も眠い目をこすりながら、音のする方を眺めた。だが見える範囲には何もない。


 私はもともと難聴気味で、人よりはそもそも聞こえが悪かった。今までの騒音も、尚文と聞こえ方は違っていた。

 しかし、今回の音は凄い間近で聞こえた。

 しかも、その音は、20連発の花火のようだった。

 尚文はそもそも、低い音が苦手だった。車のドアを閉める音。花火の音などはもってのほかだったのだ。


「家を出るぞ!」


「今から?」


「当たり前だろ!こんな所にいられるか!」


「鳥よけの花火か、イベントの花火じゃないかな?いずれにしても今日はもう上がらないと思うよ?」


「俺がここにいるの知ってて嫌がらせであげてるんだ!だから出るぞ!」


「嫌がらせ?そんな訳ないよ?誰も1人のために時間と、お金かけてまであげないよ!」


「お前は近所の味方なのか?いいから行くぞ!」


 そんなやりとりしたが、まあ尚文がストレスためるよりは出た方がいいのかと思い気分転換のつもりで、車で家を出た。

 

 もともと人混みが苦手な尚文なので、また山や人気のない公園、ダムや、河川敷などで夜まで時間を潰していた。


 朝ごはんも食べていない状態だったので、ドライブスルーで朝マックをして、山にこもって、お昼になると、また街に降りてきて、牛丼チェーンにドライブスルーしていた。


 夜20時過ぎてそろそろ帰ろうと尚文を促し、京介の待つ家に戻った。

 まさかそれが、毎日のルーティンになるとは知る由もなかった。


 ―次の朝―


 尚文から起こされる。時計を見ると朝5時10分をまわった頃だった。


 「こんな早くにどうしたの?」


「今日も鳴らされるかもしれないから、出よう!」


「ん~~、続けては流石にないんじゃないかな?」


「あったらどうするの?」


「その時出よう」


 昨日の疲れと、毎日はさすがにないと思い、ついつい、季節も1月で布団の暖かさから出たくない思いの方が強く、そう言ってしまった。


 期待は簡単に裏切られた。


―20分後―


「バンバンバンバーン、バンバンバンバンバンバーン」


大きなため息をついたのは言うまでもない。














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