第6話 パワハラ

 騒音問題。学校でのいじめの問題。夫の仕事の悩み。

 さらに同じ時期に、私自身にも、トラブルは襲いかかっていた。


 私は入社してすぐ、二年先輩の職員と、施設の見廻りなどをふくむ夜勤体制でペアを組むことになった。


 私は嘱託職員で、まだ仕事内容もよく把握出来ていない。

 施設利用客を応対する接客業務もある。

マニュアルでは分かりきれないことも多い。   そこは、自分なりの機転による対処でその場を乗り切らなければならなかった。

 だが経験が浅い新人の頃の私は、ただ慌てるばかりだった。


 フォローに入ってもらいたい状況でも、ペアを組んでいる先輩はめんどうだったのか知らんぷりで、私に任せっきりだった。


 挙げ句の果てに


「ここは、二人もいらない持ち場だから、上司に、自分はいらないって言え」


 と先輩職員から、毎日脅される始末。

そこで負けずぎらいの私は必死に独学した。

一通りのことは一人で出来るようになるまで、二ヶ月もあれば充分だった。


「先輩、ここ一人でも充分ですから、辞めてもらって結構ですよ」


 そう言ったその日から、先輩職員からの嫌味はなくなっていた。


 しかし昼間は、主任の肩書きの社員に、毎日怒鳴られていた。


注意される内容も、


「館内のポスターの画鋲がひとつ外れていたわよ」


という、自分で直せばいいはずのものや


「昼間の職員が剥がし忘れたポスターがあったでしょう、なんですぐ来て剥がさないの?」


と、昼間にはがし忘れた人ではなく、まだ出勤して着替えてもいないのに、私のせいにされ注意を受ける事もよくあった。


 ある日震災で、マスクやトイレットペーパーの配布があった。

各個人持って帰っていいと知らされ、袋に名前をつけられてあり、品物は持って帰るだけになっていた。

 ありがたく持ち帰ったら、なぜか泥棒と主任に何度も罵られた。


 夜間の私とペアを組んでる若い男性職員の人に、昼間勤務の女性の主任が、お菓子を渡していた事がある。


 けれども、そのもらった若い男性職員はそのお菓子は食べないで、ただ捨てるだけなので、よければ私にもらって欲しいと言ってきた。

 私はお菓子を仕方なくもらった。


それをどうやって主任が知ったのかは、よくわからないが、私は主任から「卑しい」と言われたこともあった。


 これは主任の嫉妬だと、私は思っている。


 担当業務とは関係のない事で、出勤して挨拶して事務室に入っていくたびに、まだロッカーにカバンもしまわないうちに、しつこい説教が始まる。

 棒立ちで立たされ、とりあえず一時間以上のお説教タイムが始まる。


 日課のように嫌味と説教をされ続けるのは、かなりのストレスだ。


 立場上はかわらないはずだが、夜間は嘱託職員、昼間は社員の職員と決まっていた。

 女性主任は夜間の担当の女性には、とりわけ風当たりが強い。


 シフトは、月曜しか休みのない職場だったので、土日の休日は貴重だった。

 ただ、夜間の担当職員は、休暇を取りにくい雰囲気があった。


 ただし私とぺアを組んだ男性職員は、毎週土曜には、サークル活動のフットサルをするために休んでいた。


 私も家庭の事が気になっていた。

尚文も最近ノイローゼ気味になっていたので、土曜日に休みを取りたいと申請した。

 だが私には、許可されなかった。

女性だったからか、夜間業務を任されているからなのか。

 休暇を却下された理由は、説明もされず、よくわからなかった。

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