第89話 新しい物件
「この間は、お世話になりました。今日は新しい物件を紹介しますので、こちらを見て頂ければと思います」
おもむろに、大家がみずからパソコンで検索し、2個所ほど提案をしてきた。その物件は片方は、かなり古く立地的にも傾斜が激しい所にあり、駐車場もなかったが、幸い駅は歩いて15分で行ける所にあった。もう一つの物件は、最近出来たばかりのアパートで、人里離れた山の中の物件だったが、バスしか移動手段がなく、駅まででるのに40分はバスでかかると言われた。店や病院も近くにはなかった。
一人で生活する事を前提に考えていたので、やむを得ず、最初の物件の坂道がきつい場所に案内してもらう事にした。2階建てで、10室部屋があり、住んでる住民は下の両端と、上の端だけだった。ほぼ空き室ということになる。
最初だけでも、気を楽に住みたいと願い、2階の真ん中に借りる事になった。上下両サイドいない状態からのスタートだ。
冷蔵庫と洗濯機の移動代と、敷金礼金は同じ大家と言う事もありとられなかった。その時は、契約書を大々的にまた交わせられたので、なんかいろいろやってもらったのかと感謝までしていたが、良く考えると以前も、ろくに住んでないのだから、当たり前だ。むしろ訴えてもいいくらいだったような気がする。と今となっては、体よく移動させられたに過ぎなかった事がわかる。
引っ越しの2日後、朝から下の階に業者が来て半日工事してて、尚文は自宅にうるさすぎていられなかった。
3日後は、引っ越しの手伝いに私が尚文の所で、いろいろ確認すると、廊下の電気の接触が悪かったり、部屋の電気も消すことが出来ない事が判明。テレビアンテナもつかえなく、ネットも無料物件なはずだが使えない。
いろいろ問題があって、一度に業者を呼んで工事やら、修理やらする手はずを整えなければならなかった。
1週間後、片付けの手伝いに、またアパートに尚文の所にきて、押し入れ一つになんとか収納。狭い台所も使いやすいように改造する。
一人用ガスコンロをネットで取り寄せ、設置したり、お一人様炊飯器を購入したり、掃除機を買ったり準備を整えた。
10日目、アパートの目の前の道路の音が気になり始める。近くに大学があり夜中の2時を過ぎると大学生がアパートの周りでたむろして話てる声が響くらしい。それと、車1台通れる幅の狭い道路があるのだが、道が悪く傾斜面な上に、アパートの前にマンホールがあって、それがガタガタして、踏んで行くたびに、「ガシャーン」と夜中に響き渡る大きな音がする。それで眠れなくなっていた。
2週間後。「ピンポーン」誰だろう?もう、夜中の2時だ。眠い目をこすりながら、尚文はインターホンに映った人を覗いた。そこには、入れ墨を両腕にびっしりしている、金髪の兄ちゃんが、いかつい顔して立っていた。
「ピンポーン、ピンポーン、ドンドンドン、ちょっとうるさいんすけど、静かにしてもらえますか〜」
誰だこいつは、なんだうるさいって。やばいぞこの人。尚文はまた嫌な予感してならなかった。
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