第54話 五十肩

  アパートで尚文と揉み合った時から、私は身体に異変がおきていた。両肩が上がらない。寝返りも打てない。着替える事も出来なく、激痛がはしった。

 今回はなんとしても、病院に行かなくてはならない。整形外科を探し、その間尚文には、カラオケ屋に避難してもらった。

 事前に探していた、病院は、たまたま臨時休業で慌てて、別の病院を探す。時間がない。尚文もあまりカラオケ屋に待たせていられないからだ。

 すぐ見つかり、診察してもらったが、そこがなんとも失礼な医者だった。

 看護婦5人に医者が1人の小さな整形外科で、やけに医者と看護婦がベタベタした感じの病院だった。

 看護婦に呼ばれ、レントゲンを撮り診察室に向かった。医者の前に座ると信じられない事を言われた。


 「あー、ただの打撲でしょうね。肩出せますか。」


 「はい。」


「なんか…誰か貼ってあげて」


「それにしても、40歳だからもっと綺麗な人がくるかと思ったら、ただのおばさんかよ、まったく」


「はぁ~?」


看護婦が、すかさずこう言った。


「まあまあ、先生そんな事いっちゃ失礼ですよ」


 まったくである。具合が悪い私は、そんな戯言、どうでも良かったが今考えるとなんて医者だと怒り爆発と言ったところだ。


 当時、睡眠時間もとれてなく、自宅で自炊も出来なくて、強制ドライブスルー生活や、車中泊、ろくにお風呂にも入ってなかったので、けして素敵な身なりはしていなかったと思う。しかし、これはない。


 結局この病院では、湿布を5枚出されて終わりだった。頑張って行った意味がなかった。

 その後も、激痛に耐えかねて、10年前にお世話になった事のある外科に行ってみることにした。駐車場に尚文にはいてもらっていた。

 そこでは、万が一を考え、総合病院でも精密な検査をするため回してもらい、いろいろ調べた結果、五十肩だと言う事が分かった。

 マッサージもしてもらう事が出来て、良かったのだが、回復の兆しは一向になかった。

 一週間に一度ペースで通っていたものの駐車場で、尚文が待つ事が困難になってきた。近くの民家から、エンジンつけてると目立って覗かれると言うのだ。

 寒い日に、エンジンつけない車の中でまたせるのも大変だし、病院の中にも入れない。 

 しかたなく、近くのコインパーキングにも止めてみたが、そういう時にかぎって、パーキングの隣の自宅が出入りが激しい。そこも駄目となり、今度は接骨医院に紹介状を書いてもらった。


 そこの駐車場はスーパーの1画なので、ある程度は大丈夫かと思っていた。しかし、そう上手くはいかず、隣にきた車や、後ろに止まった車がどうも気になると言う事でだった。

 昼間に休憩にくるサラリーマンが止める事があるので、ずっと車に乗っている人が気になったり、病院を夜に予約したりしたが、夜は夜で、不審な車が来てライトを後ろから照らされたりして、いられないとの事だった。

 結果、病院には、そのうち行かなくなっていった。

 






 

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