第23話 警察24人
兄の入院していた病院の駐車場は、第一駐車場、第二駐車場、第三駐車場と三つある。
第一、第二駐車場は病院に近いが狭く、人の出入りも激しく、停めるのが大変だった。
尚文は人が沢山いる病院には入れない。
車で待っていた方が都合が良かったため、私は少し離れた砂利が敷かれている第三駐車場にいつも停めていた。
そんなある日の夕方また事件が起きた。
その日は、夕方5時から病院のケースワーカーと医師の面談があったため、少し遅く自宅を出た。
1時間半ほど話し合いが行われ、兄の身の回りを片付け、兄と話しをしていたら夜8時頃になっていた。
そんな時に、尚文から私の携帯に一通のメールが来た。
「今戻って来ないで」
「どうしたの?何かあったの?」
慌てて送ったが、既読がつかない。
戻ってくるな、と言われたら、戻らないわけには行かなくなるのが、人の心情。
私は、慌てて戻った。
警察官10人に囲まれている。
「なんの騒ぎですか?」
「お母さんですか?ちょっと、こちらで事情伺います」
訳わからず、説明もされず、とりあえず、こちらの身元を洗いざらい聞かれた。
「で、何があったのですか?」
「こちらの近くのお宅に石が投げられたらしくて、通報があったんですよ」
「それと私たちに、何の関係があるんですか?」
「ここの駐車場にいた人たちに事情聞いていたんですけど、息子さん寝ていたんでね、事情を聞きたかったんですよ。失礼ですが、車の中を見せてもらえませんか?」
「分かりました」
とりあえずは、車内を見せたものの、以前に化石掘りした時の、化石が積んであったのを警察官が見つけて
「あ~、これ、証拠ですよね」
「ちょっと、待ってください、これは以前、化石掘りした時の化石で。あの、そもそも、投げられた石って見つかってるんですか?」
「見つかってません」
「じゃあ証拠にならないじゃないですか」
「いや、そちらの息子さんが犯人だとこちらは思ってるんで」
そんなやりとりがあり、追加でまたパトカーが1台と、覆面らしきパトカーが2台応援で駆けつけにきた。
ここの地域のパトカー全部集めたのかという勢いだった。
殺人事件が起きてるのか、というレベルの騒ぎで集まってきた。
長い茶色のコートを着た年配の刑事らしい人、婦人警官、ベスト着た警官、交番にいるような警官、ありとあらゆる警察官が勢揃いした感じだった。
あまりの人数、総勢24人くらいいたような気がする。
だんだん腹だたしさを感じてきた。
「被害届けを出してきた方はどの家の方なんですか、その方と会わせて下さい。直接話せば、誤解は解けるはずです」
私が警察官に言うと、駐車場の脇の細い道路の坂を登った所で、警察官同士が、腰に手を回し横一列に並んで、通せんぼをしている感じだったので、あ、そこの先にあるお宅なんだなと思った。
「貴方がたが、帰るまで見張ってるので早く帰って下さい」
警察官から私たちが言われたのは、夜の11時になってからだった。
こちらは個人情報聞き出され、拘束され、罵倒され、犯人扱いされ、挙げ句の果てに、早く帰れはないんじゃないかと思い、悲しい気分でいっぱいだった。
本当にひどい私の誕生日だった。
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