第61話 アニメオフ会

 京介から電話がきた。もう一つのアニメオフ会に京介が尚文と行ったが、入り口であまりの怪しさに引き返して来たという報告だった。

 グーグルマップを頼りに繁華街に2人で開催してるであろうビルを、探して行くと、その会場はあったらしい。いかにも入りずらそうな、重そうな大きな扉があり、尚文と京介はうろうろして躊躇していたそうだ。


 5分くらいすると、中から、金髪のバーテンのような服を来てサングラスをした人がタバコを咥えて出てきた。


(なんか、ヤバそうな感じだ)

と尚文は思ったらしい。


 タイミング良くちょうどそこに1人の青年が来た。チェックの服に、メガネをかけた短髪で黒髪の、トートバックを肩に下げた、ひ弱そうな見た目の若者だ。


 「おー!良くきたね!今日は遊んで行ってよ〜」

とグルッと肩に手を回され、中に連れて行かれたと言う。


 入り際に、「もしかして、お宅も遊びに来てくれたのかな?」と尚文と、京介が聞かれたらしく、咄嗟に「いいえ、違います」と言って逃げて来たという。


 「あれは、やばい強制的に引き込んで、ボッタクリしてる場所だ」

 と信じて疑わなかった。そんな訳あるはずがない。いくらなんでも、何回も開催してるアニメオフ会なのに、気分を出してただけだろうと思う。多分それもアニメの役を演じてたのではないかと思った。

 

 でも、それでもスリルを楽しんだなら良かったのかもしれない。


―数日後。


 別のアニメオフ会が開催され、グループホームの施設長と駅裏で待ち合わせをして連れて行ってもらうことになった。


 結果は、あまり楽しめなかったらしい。

施設長はダンディなおじさんなので、そこでは、それなりに、モテモテだったらしい。しかし、肝心の尚文は、グループの中に入り込めず、おじさんと最初から最後まで2人で話をしていたらしい。

 アニメの話は幅広く知っているし、話を振られればある程度話せるが、自分から話に入っていけないので、ただ、アニメの好きな人がいる喫茶店に30分7,000円払ってジュース1杯飲んで、出てきただけだった。


 なかなか、アニメオフ会で話たいこと話したり、出会いを求めたりするのは難しいのかと痛感してしまっていた。今なら、自分が主催して、アニメオフ会開くのもありだと思ったりするけど、その時は考えもしなかった。


 そうしてる間にも、尚文が今度1人暮らし出来る所を探していた。入院する前も、3箇所くらいはあたっていた。そのうちの1箇所で、アパートだが、今は誰も住んでなく、県境にあり裏は山で、前は私道、隣も潰れた旅館という場所があった。ただ、人が住むには、修繕が必要ですぐには住めないという場所があったのだが、そこが住めるようになったと連絡が入っていた。


 

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