第111話 機転

 彼と歩いていると軽トラに島の人がいるのを見つけた。


「あの〜、すいません彼女が船酔いして具合悪くしてしまったんです。宿をとってるんですが、ここからどのくらいかかるか、教えてもらってもいいですか?」


「あ〜、ここからだと結構あるよ、良かったら軽トラに乗せて行くよ! 彼女さんは助手席でお兄さんは後ろの荷台で」


「あっ、助かります! ありがとうございます!」


「みわさん〜、こっちこっち、軽トラで宿まで送ってくれるって!」


「あっ、すいません、助かります。ありがとうございます」


 神様に遭遇したような感じだった。具合が悪かったので、かなり助かった。歩いていたら何時に宿に着いたか分からなかった。彼の機転の効く行動力にも感謝をした。


「今日は波が荒かったから、酔われたんでしょう、普段はこんなに波高くないんですけどね」


「そうなんですか? 船にあまり乗らないので分からなかったです」


「明日は午前中に帰られるといいですよ、比較的波は穏やかなはずですから」


「午前中は波が穏やかなんですね、考えておきます」


こんな話をしながら、10分くらいで宿に着いた。


「助かりました! ありがとうございました!」


「んじゃ、また!」


島の人は、軽く手を上げると帰って行った。彼と私はチェックインを済ますと、部屋に行き扉を開けた。


「ん? これって御茶漬海苔の部屋じゃないか?」


「何? 御茶漬海苔?」


「ホラー漫画を描く人だよ、知らないの?」


ここは、沢山のマンガ家達の部屋が並んでいた。たまたま選んだ部屋が御茶漬海苔の部屋だった。 他にも、ちばてつや先生や、里中満智子先生の部屋がある。


「よりにもよってなんで、御茶漬海苔なんだよ?」


「ネットを見た時に猫の絵が1番大きくて、可愛く見えたの!」


「良く見てごらんよ、こっちをジロってどこの角度からも見つめてる絵だよ」


「だってその御茶漬海苔先生? 私分からないけど、まあ可愛いじゃない」


「僕はこの先生のマンガを読んでて知ってるんだよ、なおさら恐怖を感じる」


「ビビり屋だなぁ〜、そんな絵ごときで怖がって。 ふっふ」


「そういえば、今日は泊まり客は僕らだけって言ってたよね? 扇風機があまってるから持っていきますってフロントの人が言ってたもんね」


「そうだね、ペンション沢山あるけど誰も泊まってないんだね、まあ事務所には、1人いるけど、その事務所も少し離れてるしね」


「少し休んで、猫神社に行ってみようか?」


「うん、そうしよう」


 日が暮れる前に2人で猫たちに会いに、そして猫神社に向かった。


 黒猫の子猫がいた。途中何度も振り向いては止まり、振り向いては止まり、まるでこっちだよと言われてるかのような感じで見ていた。


「ついて来いって言ってるようだね、行ってみようか?」


 私と彼はその黒猫ちゃんについて行くと、脇道に入り蜘蛛の巣がかかってる誰も通っていない階段に案内された。


 その階段を登っていくと、小さなお稲荷さんの祠があった。ここに連れて来たかったのか。 私と彼は手を合わせてると、黒猫ちゃんは、ヒョイッとまた脇道に入って行った。












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