第82話 お金と携帯が消える
《こんにちは、実は今尚文さんと会ってるんですけど、バス乗ったら尚文さん気持ち悪くなっちゃったみたいで、今トイレで吐いてるんですけどどうしたらいいですか?》
尚文はバスや、タクシー、といったような狭い空間には乗れなかった。電車にも3つおきに駅に降りないと目的地まで行けない。よく彼女が一緒といっても乗ったものだ。
《あ、尚文は公共機関乗れないって伝えてたと思うのだけど》
《出来るだけ社会に独り立ち出来るように協力しようと思って》
《そうだったの、嬉しいけどせめて少しづつ一駅づつとかの方が良かったかもね。とりあえず、様子見て今日は無理させないであげてくれるかな》
《分かりました》
その後尚文はあやのさんの自宅に遊びに行って一晩過すと、すっかり気分を良くしてまた次の日の朝、仕事があるからと駅で、あやのさんと別れた。
切符を買おうと財布を見た時だった、またしてもお金がない。この間のゲームの売り上げ金2万円と、一人暮らし応援金1万円の合計3万円がすっかりなくなっていた。この間電車賃で崩したとはいえ、あれから一千も使っていなかった。2万9000円は消えていた。
ご飯はいつもあやのさんにご馳走なっていたので、財布を出していないし、昨日のバスは、バスカードを使っていたので、いつなくなったのか分からなかった。
また小銭しかない事に気付いたので私に助けてメールをよこした。
《また、お金がなくて困ってるんだけど、1000円でもいいから貸してくれないかな?》
《またお金がなくなったの?おかしくない?使った記憶はないの?いくら入れておいたの?》
《使った記憶なくて、万札が2枚と、千円札が確か9枚あったはず……》
《とりあえず、1万円今振り込んでおくけど、他にも何かなくなってないか見てみて》
《分かった》
一抹の不安がよぎる。もしかしてあやのさんが盗んだのか?まあまだそう決めつけるのはまだ早い。証拠がないし、尚文の為にいろいろ動いてくれてるではないか。そう私は自分に言い聞かせた。
――数分後。
《もう一つのあまり使ってなかった、携帯がない。もしかして、あやのさんの家に忘れて来たかもしれない。聞いてみる》
《携帯がないの?うん、聞いてみて!もしなかったら、また教えて、いろいろ探さないといけないだろうから》
あやのさんに聞いた答えは、「知らない」だった。結局、昨日の乗ったバスに落とし物で届いてないか、駅や、交番の忘れ物センターに連絡をしてみた。 どこにも、携帯は届いてなかった。
そんな中、彼女(あやの)さんから私に連絡が来た。
「引っ越しの手伝いするんで、お邪魔したいのですが。尚文さんがこの間泊まった時に忘れて行った物も、あるし届けたいので会えませんか?」
まあ、多少あやのさんを疑ったてはいたものの、まだ犯人と決まった訳ではない。尚文が忘れ物もしたというし、犯人じゃなかったら、普段お世話になってるのに、かなりここで何もしなかったら、失礼になる。
「分かりました。ランチした後に、アパートに一緒に来て下さい◯◯日◯◯モールに、13時で大丈夫ですか?あっちなみにその忘れ物、携帯とかですか?」
「いいえ、違います。尚文さんの着替えです。じゃあ楽しみにしてますね」
と会う約束をしたのだった。
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