第115話 花火

「今日は夏恒例の花火を見に行くよ!」


「夜からだから、朝はゆっくりだね」


 ここらへんでは結構有名な花火大会に、彼を連れて行く事を前々から計画を立てていた。

 夏と言えば花火。

 2人で見られたらロマンチックな思い出になるかなと思っていた。これで彼が過ごす一週間を締めくくるには最高の思い出になるかなと考えていた。


 家から車で片道2時間、途中大好きなたこ焼き屋さんでたこ焼きと、たいやきを2つづつ注文して、花火会場まで向かった。会場は満杯なので、そこから少し離れた川岸の神社の所に車を止めて見ることにした。


 神社と言っても駐車場はなく、砂利道に車を置かせてもらった。


「みわさん、ここに車止めてもらうから、神社の神様にお願いして行こう」


「そうだね、そうしよう」


「花火見る間、ここに置かせて下さい、宜しくお願いします」


川岸で花火を時間になるまで待っていた。


「みわさん、見てごらん地震雲じゃないかな、方面的には南から北に伸びてるね」


「地震雲?地震来なければいいのだけれど」


「花火は今年は久しぶりの開催なんだよ、コロナで中止だったらしい、楽しみ」


【ドッドッドッーンバーンパッパーン】


赤、青、黄色、いろんな、色の模様が夜空に輝いている。心が軽くなるようだ。


 久しぶりに見る花火は綺麗だった。ゆっくりみたのは何年ぶりだろうか。子供が花火の音が駄目だったので、近づく事ができなかった。しばしの休息だった。心から休まらないけど、幸せだった。


 花火はあがってるときは綺麗なのに、終わるときは、何ともいえなく切ないのは私だけだろうか。終了時間の5分前になり彼に戻ると促した。


「帰ろう」


「うん、そうだね」


「花火を見てる間、車を止める事が出来て助かりました。ありがとうございました!」


2人で神社にお礼を言うと、空が急に暗くなってきた。雲行きがなんか怪しくなってきた。


【ザッー】


 危機一発だった。車の扉を閉めた瞬間の事だった。バケツをひっくり返したような、凄いスコールが降ってきた。あたり一面水浸しで、前が見えなくなった。


「助かったね、一足遅かったらびしょ濡れだったね」


「ほんとだね、花火大会見れて良かったね」


 帰りはびしょ濡れになっていた人や、視界が悪く縁石に乗り上げてしまった人などがいて大変そうだった人達を横目に慎重に帰った。


 彼がいる間は、とりあえず観光名所は、南から北まであちこち飛び回った。もちろん、その合間には、家でゆっくりくつろいで、映画鑑賞などもしていた。


 每日食料の買い出しも馬鹿にならず、彼は調味料を沢山入れるのが好きな人だった。その都度、家計がどんどん圧迫していき、ちょっと予算オーバーになっていって辛くなっていた。


 私は調味料は基本、塩、胡椒、醤油、つゆ、味噌くらいしか使わない。 けど彼のこだわりは凄かった。ソースは2種類、鶏がらスープに、味の素、本だし、マスタード、私の使わない調味料ばかり購入する。


 せっかく高級なレトルトカレーを用意したのに、袋を鍋に開けて、市販のルーを入れて別のレトルトも混ぜて、コーヒーと、チョコレートを入れて、家にあった、くるみを入れて、味噌を入れて、毒々しいので私が冷凍カボチャを全部投入して味を整えたけど、なんか純粋な高級カレーの味が消えて悲しくなってケンカをした。


















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