第78話 宗教の勧誘

 私はネットを通じていろいろな訳ありの女性に出会ってた。


 離婚を考えてる女性だったり、国家資格を取るために、猛勉強中の女性だったり、イベント事が好きな女性だったり、心理学のカウンセラーという女性だったり、年齢も近く意気投合して、たまにカフェでお茶して、楽しく談笑していた。


 その中に1人だけ極端に子供くらい年齢の離れている若い女性がいた。


 私は子供に会えない寂しさから、その女性が懐いてくれるので、親近感を覚えて何回かお茶をしていたが、途中から相談もなしにお茶をする場に、いろんな男性をその女性はつれて来るようになった。


 最初は、最近の若い子はこんな感じなのかと、戸惑いつつも、男の子がいても変わらず序盤は、アニメやゲームの話題で盛り上がっていた。しかし、話が進むにつれ後半の方になって、話題が宗教の話に変わっていった。


 なるほど、勧誘したかったのかと思ったが、まあ、宗教そのものは悪いものじゃないし、本人達はそれを心から信じて救われてるなら、止める筋合いもない。私は、はっきり断った。相手も納得してそれをその時は、受け入れてくれたように思えた。


 その夜、携帯から「ゲームしませんか?」と誘われ、少なからずとも宗教の話はされないし、普通に遊んで少し楽しかった。それから毎日のように、朝になるとおはようございますとメールが来て、たまにランチをする間柄になっていった。


 私は心をすっかり許していた。友だちのような、親子のようなそんな感覚になっていた。つい自分の身の上話をしてしまった。尚文の事も今までも、なかなかいい物件に巡り会えなくて困ってるという話もしていた。


 その女の娘は、あやのさんと名乗った。


「私と尚文さんを会わせてくれませんか?少しでもなにか、お役に立てるかもしれません。」


「会いたいの?うーん、尚文にも聞いてみないと分からないけど、本人が会ってもいいって言った時は、連絡するね、だけど1つだけ約束して、宗教だけは勧誘しないでくれるかな?」


「分かりました。約束します」


 後日、尚文に了承を得た私は、あやのさんに尚文のラインを伝えると、お互いに最初から、ラインの電話で会話をしたらしく、尚文のあまりの紳士的な態度に好感を持ったとあやのさんが、興奮して話てくれた。


 その後は早かった。あやのさんと尚文は、約束して会って食事をしたり、お話したりしたという話を各々から、私は報告を受けていた。


 途中会えなかったり、約束した時間から、半日待たされたとか良く分からない事も尚文は言っていた。そして、決まって何故か食事代は尚文が割り勘と言っても、あやのさんが尚文の分も2人分出していたという。


 今思えば、おかしな点はいくつもあったように思う。この時は、引っ越しのトラブルでいろいろあったから、相談にのって支えてくれる人が出来て良かったと、個人的に、私は都合よく解釈していた。 


 実際、尚文にとっても山の中の一軒家で、いろいろあったし、出てきてもトラブル続きで参ってたので、あやのさんとの出会いは、今の状況を忘れさせてくれて、寄り添ってくれる恋人が出来たように、浮かれていたと思う。

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