第79話 デート
尚文は辛い時に幾度となく、彼女に会っていて、親身になって相談にのってくれたり、食事を作ってくれたりしてくれる、あやのさんが好きになっていた。そのうち泊まりに行く約束までしていた。
新しいアパートでは、引っ越しの初日に、下の階の住民とトラブルになっているので、山の中の一軒家にまた戻っていた。今月いっぱいは、引っ越しの準備の為借りていたのだ。まだ後3週間は居れたのだ。
あやのさんとデートをする度に、京介が街まで送っていったらしい。京介の仕事の都合があるので、午前中に街まで連れて行ってもらっていた。
あやのさんと会う為には、たとえ1時間しかなくても、尚文は、帰りはビジネスホテルに泊まるか、ネットカフェに泊まるかしか方法がなかった。山の中まで帰る手段がないのだ。また次の日京介に街まで迎えに来てもらうしかなかった。
それを何度か、あやのさんに会いたい一心で、繰り返していた。後で聞いた話だが、尚文は1対1で会っていたわけでは、なかったらしい。やはりいつも、あやのさんの側には、男性がいて宗教を勧誘されていたとの事だった。
一度だけその男性に、山中の自宅まで送ってもらった事があったらしい、友情価格2000円だったとか。
はっきり、入らないと本人も断ったらしいが、結構無理やり、御祈りの場所に連れて行くと言われて車に集団で、乗せられそうになったと言っていた。激しく抵抗して、事なきを得たとは言っていたが、それでも彼女(あやね)さんの事は好きになってしまったと言っていた。
恋は盲目であるとは良く言ったものだ。
当時勧誘した事を、あやのさんに私は問い詰めたら、あっさり認めて
「すいません、でもはっきり断られました」
とだけ言われて、あまり反省してない様子だった。(勧誘しないと約束して、なにかお手伝い出来るかもっていうから、会わせたのに)やはり世の中、美味しい話は気をつけよう。
「尚文さんのお母さん、尚文さんは山の中だと会うにしても不便だし、今後の事を考えても街の物件の方がいいですよ。私も引っ越し手伝いますよ。新生活、何かと物入りだと思うので、私プレゼントあげたいんですけど、新しいアパート行っていいですか?」
引っ越してきて、トラブルあったままになっているので、私も行きにくい状態ではあったが、引っ越しの手伝いもしてくれるし、尚文がいいなら、いいかなって思っていた。
でも尚文には、私は会えない。サポートはできても、逃げて来た身分なので、尚文に直接会うのは避けていた。
その後尚文に聞いたら、もちろんいいとの事。本人が居なくても、あやのさんなら大歓迎との事で、私がアパートに連れて行く約束をした。
(ここでも、私はあやのさんを勧誘の事で疑いながらも、またもや受け入れてしまっていた)
私と、京介は、新しいアパートに、マットを敷いたり、音の出ないスリッパを購入したり、暖簾を買って光が漏れないように工夫して住みやすくしていた。
その上で、試し泊まりを代るがわる、京介は仕事の都合2泊3日、私は3泊4日それぞれ違う生活パターンで音を出しながら、尚文の契約したアパートで、生活してみたが、下からはなんの苦情も出なかったので、尚文にもその旨を伝えて住むことを勧めた。
尚文が安心してアパートに戻ってきた初日の夜は、彼女(あやねさん)の家に行く約束をしていた。前にデートした時に、いろいろ彼女好みの、尚文に似合うであろう洋服を、選んでもらっていたらしく、沢山買っていた。その中から、着ていこうと張り切っていたのだ。
おしゃれに興味がないのに、恋の影響は偉大である。
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