第77話 SNSで見つけた新たなる物件
しばらく山の中の一軒家で、尚文は生活をしていたものの、いつ工事が始まるか分からないので、新しい物件に、移り住むことにした。
引っ越し当日、京介がしばらく住める家具や、調理器具、布団、などを車に積んで、尚文をそのアパートに送ったのは、夕方4時頃だったという。
ガス屋を待って、その日のうちに調整してもらい、夜19時頃に一旦食事に、京介と出掛けたらしい。帰って来たのが、夜22時でそれからお風呂に入って、眠ろうと12時に布団に入った時の事だった。
「ドンドンドン、ガチャガチャ」
「出てこいや、いるんだろ!」
玄関のノブを回す音や、ポストから手を出してるような音、それが15分くらい続いただろうか?尚文は怖くなって、イヤホンをして布団にもぐってガタガタ震えていた。
しばらくすると、音はやんでいた。そのうち、急激に、眠気が尚文におそってきた。多分、極度の緊張と引っ越しの疲れもあったのだろう。気付かないうちに朝を迎えていた。
朝目が覚めると、インターホンが光っていたので、ビデオカメラを覗いた。恐るべき光景が映っていたのだ。ガタイのいい男がいかつい顔をして、カメラを、覗きこんでいたのだ。かなり怒っている形相で、ドアを叩いて怒鳴っていた。
その後ビデオカメラのPM3時にも警察官が2人訪ねて来ている。夜中にどうやら来ていたらしい。イヤホンして気絶したかのように眠ってしまった尚文は、不幸中の幸いか警察官が、来たことすら気付かなかった。
朝起きて昨夜の事を再確認していた時の事だった。
「ガチャガチャ」ピンポーン「ドンドンドン」
玄関ドアの窓を眺めたら、昨夜の奴がいた。どうするか悩んだ挙げ句、尚文は警察を呼ぶ事にした。すかさず、京介にも来てもらう事にした。
――20分後。
下の住民と警察官がなにやら話してる声がした。そこに、タイミングよく、京介が来た。その後に、警察官が訪ねて来た。
「御宅は、ここの住民ですか?」
「はい、そうですが。」
「下の階の住民の方が足音がうるさくてとおっしゃってるので、少し静かにしてもらえますか?」
「はい?昨日引っ越して来たばかりで、まだ片付けもしてないのですが、歩いた足音ですか?」
「そうです、110番されれば私達は来なければならないのですが、今下の階の人に会いまして、昨夜騒音の件で110番したと言っていたので」
「ふざけないで下さい。今は俺が110番したんですよ!生活音がうるさいとか、昨日、始めて引っ越ししてきて、夜中に玄関をドンドンドンされた方がよっぽど迷惑ですし、今朝も下の階の方ですか?良く知りませんけど、ピンポーン、ガチャガチャされまして、怖くて、警察を呼んだんですよ!」
「そこは、お互い気をつけてもらうと言う事で」
京介が間に入ってこう言った。
「まあ、昨日引っ越ししてきたんで、マットとか、スリッパとか今日揃えるんで一応対策はすると伝えて下さい」
「分かりました。では宜しくお願いします」
警察官はたじたじで、出来る事なら自分たちで解決しろとでも、言わんばかりの様子だったが、京介の対応に帰って行った。
ただこれではっきりした事がある。昨日来たのが下の階の住民で、夜中に警察官を差し向けたのも下の階の奴だ。理由は、足音。初日から敵対視するとは、前途多難だった。
私は後で聞いた話だが、最初から誰もいない部屋から、人が入ったらそりゃ音がして当然だし、夜中にくるほうが非常識で、まして警察騒ぎを起こすなんて、信じられないとまたしても、近隣についてないと思ってしまった。
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