第109話 猫島
「夢みたい、ありがとう念願の猫島に来れて幸せだよ!」
「僕も来てみたかったから、それは良かった」
自分の住んでいる県に猫島がある事を知っていたが、なにせ1人行動が出来ない臆病な私はまだ行動に移せていなかった。
なので、今回は、彼が私の誕生日に猫島に行こうと誘ってくれたのは凄く嬉しかったのだ。彼を強引にも呼んだのは、半ばこの旅行を決行したかったためでもあった。
だからこそ、この旅行には、綿密な計画を立て、いろいろ準備をして、並々ならぬ気持ちがあった。
そこで、私なりに持ち物や、資金も準備して、現地の情報集めや、地図も確保していた。
彼から送られていた資金の一部も、実はこの日の為にあえて返していなかった。
彼は多分だけど、その気持ちは分かってくれてると思っている。
それは、彼からこの旅行を、プレゼントしてくれたって思いたかったからだ。この計画には必要不可欠な人材なので、お礼に、精一杯1週間もてなす事を決めていた。
車を確保し、それまで疲れないように、計画もねっていた。当日朝早く起き、お昼のおにぎりを作り、夜には島泊りなので、朝と夜の分の食料や飲料水もバックに詰め込み、暑い時の為に小型扇風機を持ち、ポータブルゲームを入れ、アメニティも持ち、船に乗るので酔い止めも持ち、携帯の充電をして準備万端にしていた。
そして当日。
「今日は波が荒いので出向するか分かりませんよ、少しお待ち下さいね」
波が荒くしばらく状況を見てからと言う事になった。船着場には、猫たちがいて餌を食べていた。
「可愛いいね〜」
「可愛らしい、こんにちは〜」
彼は猫に挨拶をしていた。面白い。動物好きなのが分かった。丁度お昼近くだったので持ってきたおにぎりを彼は車で食べることにして、私はゼリーを食べた。
「ん?なんか飲み込んじゃったよ?」
「何を飲み込んだの?」
「この梅のおにぎり種入ってた?」
「うん。コンビニじゃないんだから、そりゃ入ってるでしょ」
「嘘だ〜!普通は入れないって」
面白かった。
今までの経験の違いだ。彼の事を心配するよりも先に、吹き出してしまった。楽しい!彼は梅干しの種を飲み込んだんだ!しかも結構大きい種を。私は緊張のあまり食欲がなかったが、「少しでも食べておいた方がいいよ」と心配してくれた彼の言葉で、ゼリーを頑張って飲み込んだ。
「船が出る事になりました!」
チケットを往復購入して、列に並んだ。
「もうすぐ、乗船だね。なんか酔いそうで心配になってきた」
「あっと言う間につくから大丈夫だよ、周りの人も結構並んでるけど、皆同じ所に行くのかな?船出て良かったね。船着場も揺れるんだね」
「そうだよね、波荒れてて出ない所だったんだもんね、ささくんは酔いとかは大丈夫?」
「酔うことはあるかもしれないけど、そういえば、梅干しの種食べると酔わないって聞いた事ある!」
「本当に?」
彼は本当に面白い人だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます