第99話 待ち合わせ

「誰かいた?何か分かった?なんだったんだ今の音、誰かいたよね」


「下まで見てきたんだけど、誰もいなかった。なんなんだろうね。明らかにこのアパートでかなり近くで聞こえたから、多分この階に誰かいたような気がする」


「ちょっと俺も見てくる」


 尚文は興奮気味にそう言うと、飛び出して行った。


「バンバンバンバン」


 外で、大きな振動と音がした。尚文が廊下でジャンプして試しに音を出したらしい。


「誰もいなかった、誰か嫌がらせで目の前走りやがったんだ 頭にくる。何なんだ、こんな早朝に」


「ずっと空き家になってて、さっきトイレ流す音で確信得て、すぐさま来た感じにも思えるね」


「頭にくる、なんかイライラする、どうしたらやっつけられるかな、明日またあいつ来たら、捕まえてやる、お前も協力しろよ」


 興奮すると、すでにお前呼ばわりだ。周りが見えなくなっている。それに集中してしまって他の事が、もはや考えられなくなってしまうのは悪い癖だった。


 頭を切り替えられないまま、ごはんも食べる気になれず、モヤモヤしたまま午後の友達の約束がせまっていた。友達と会う場所まで車で片道2時間かかるのだ。尚文の機嫌を取りながら、なんとか、目的地まで直接行けば間に合いそうだった。


「お腹空いた。朝から何も食べてないから何か食べたい。ドライブスルーよって」


その時、友達からはメールが入っていた。「30分前だけど現地に着いたので待ってるね」というものだった。


 今ご飯を食べていたら確実に時間に間に合わない。遊ぶ場所は、カラオケ屋だったので、今思えば、コンビニによってカラオケやで食べさせるのが1番だった。なのに、頭が回らなかった。


「ドライブスルーに寄るけど、あまり時間ないから急いで食べてね」


「えっそんな早く食べられないよ、胃が痛いのに……」


 うん、そりゃそうだ、いつも私は無茶な事を言っていた。


 その間にも友達に、メールで

《道が混んでて、30分遅れそうです》

と送ったが、返事がない。すでに待ち合わせ時間だった。多分怒ってるのかもしれない。


「もう時間ギリギリでかなり待たせてるからお願い急いで」


 (急いでではない。過去の私に言ってやりたい。消化にわるいぞ。それを持ってカラオケやでゆっくり食べさせてあげなさいと)


「分かった、じゃあ食べてやってもいいよ」


 (尚文もそこで納得するではない、なぜ提案しないのだ。店で食べると)


 急いで食べ終わって、すぐさま待ち合わせ場所に着くと、友達はかなり怒っていた。


「随分道が混んでたんだね」


「う、うん」


(ごめんよ、私の大事な友人よ。私は大切なあなたに嘘をついてたよ。ご飯を食べて遅くなってたんだよ本当は。この場を借りて謝罪します。ゴメンナサイ……)


 友達は、30分前に着いていたから、1時間待たせたことになる。待っていてくれた友人に感謝する。











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