第113話 猫神社

 猫達の後をついて行くと、すぐに猫神社が見つかった。するとどうだろう、颯爽と前を歩いていた4匹の子猫が右、左、前、祭壇、に香箱座りをした。フォーメーションを綺麗に組んだのだ。4匹は私達をじっと見つめていた。


「みわさん、猫達可愛いね」


「囲まれて、見守られてるみたいだね」


「◯◯◯丁目、みわと申します。この街の猫達がいつまでも幸せに暮らせますように、見守ってて下さい」


「◯◯丁目、笹木と申します、みわさんといつまでも一緒にいられますようにお願いします」


 2人でお祈りすると、また島の駅に引き返した。道中はもちろん猫達のボディーガード付きだった。


 ダッダッダッ振り向いて、ダッダッダッ止まり、私達を待ってくれていた。


 そんな感じで島の駅まで着くと、猫達の仲間が待っていて、「よく案内できたね」と言わんばかりに、集まってきた。


 暗くなってきたので、そのままありがとうといって手を振り、宿に戻った。


 途中まで、私のお気に入りの子猫ちゃんがついてきそうになったが、私も振り向くのを我慢して、猫ちゃんもそれ以上ついて来なかった。別れるのは淋しかったけど、島は暗くなるのが早い。


 宿に戻ると疲れていたので、先にシャワーに入り、持ってきたおにぎりと、カップラーメンにお湯を沸かして食べる事にした。夜風が気持ちが良かった。窓を開けて網戸だけにしておいた。


 それにしても相変わらず、お茶漬け海苔の絵はなんとも言えない迫力がある。あちらこちらから見られてる感じがあって、どうも落ち着かない部屋だった。


 そんな時だった。


「……カチャカチャカチャ」


「ん? 今なんか聞こえた? 」


「……カチャ」


「気のせいだよ、今日は私達しか泊まってないんだよ」


「カチャカチャ」


「でも玄関から音してない?」


「お風呂場じゃない?さっき、シャワー浴びたから、雫でも落ちてるんだよ」


「そうかな~」


「カチャカチャ」


「お湯沸かしてる音じゃない?」


「カチャ」


「……」


「心配し過ぎだよ、お茶漬け海苔の部屋だから恐怖心が増したんだよ、フッフ」


「……みわさん、なんか、視線感じる」


 窓辺に目をささくんがやると一匹の黒猫ちゃんが遊びに来ていた。


「なるほど!脅かすなよ、カチャカチャ玄関やってたのはお前だな」


「びっくりしたね、笑、可愛い子猫ちゃんか」


「おにぎりあげよう、食べるかな、ほら美味しいよ〜」


「にゃ〜」


 黒猫ちゃんは美味しそうに鳥五目のおにぎりを頬張った。


「まだ欲しいの、もうちょっとだけあげるね」


「にゃ〜」


 ささくんは、慣れた手つきで猫に餌を数回に分けてあげた。


「可愛いい、私もあげたい」


「シャー」


 みごとにひっかかれてしまった。梅干しおにぎりの白い御飯だけあげたのがいけなかったのか、部屋に入りそうになって、駄目よと言って、猫の手を網戸に挟まないように閉めたのがいけなかったのかはわからないが、嫌われてしまった。


 部屋に張り紙で【部屋に猫を入れないでください】と書かれていた。この猫は常習ニャンコなのかもしれない。

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