第63話 行き場のない怒り

 家賃の重複問題で、弁護士に相談するのに、消費者センターの紹介があった。指定された弁護士事務所に向かい、京介と、尚文と私は弁護士と話あった。


 結果は、取り返せる確率は高いが、費用として、15万かかるというものだった。

32万の家賃を取り戻すのに、手数料で15万弁護士に支払う。うーん考えてしまった。結局とりあえずやめて振り出しに戻ってしまった。


 多く払ってる分返してもらうだけなのに、こんなに苦労しなくては、いけないのか、すごく、悩んだ。尚文は、自分だからなめられたんだとまた苛立ちと、怒りを込み上げ、どうにもならない辛さを抱えて体調が悪くなっていた。


 尚史の行き場のない感情が、また近所の音に向かっていた。少し草刈りの音がしたり、工事の音がしたり、目の前が道路挟んで観光物産展のような店だが、そこに来た車で1台1台の音にイライラしていた。


「わざとこっちに向かって開けしめして、音出してる」


「そんなわけないよ、こっちの存在さえ知らないはずだよ」


「あの車、毎回来てる。こっち側に止めてしかも車の前に人立ってこっち見てる」


「気のせいだよ。周りをながめてるだけ」


「お前はあいつらの仲間か、ちゃんと監視してろよ」


 といった感じになり、尚文は窓を何度も開けしめして大きな音立てて威嚇したり、外に出て階段を鉄の棒で音が出るたび叩いたりしていた。


 草刈りに対抗するため、草刈り機も買うように尚文から言われて、電動の草刈り機を購入。周りが草が伸びきっていたので、歩くスペースを確保の意味でも良いかと思ったのだ。


 草刈りの音や工事の音、はたまた国道沿いで、爆音を鳴らしながら走っていく、バイクやトラックが行った後など、草刈り機を動かすように言われていた。少し周りの草を刈って音を出してると尚文は落ち着いていたからいいと思っていた。


 尚文自身も窓を全開にしてよく掃除機をかけていた。掃除機の音を出してると落ち着くらしい。


 裏が山なので住んだ当時はニホンザルも来た。木の枝にぶら下がって、玄関に向かって、威嚇の雄叫びをされたり、屋根に登られてバンバン跳ね回られたりしていた。最初はびっくりしたが、動物は可愛いものだと尚文も言っていた。


 そんなある日、あまり音を出していた為か、近所の人がよく家を近くまで見にくるようになっていた。逆に目立ってしまっていたのかもしれない。尚文に様子見してこいと言われて携帯持って外にでた。


 私は知り合いにこんな所に住んでるというのを教えたく、周りの山とかお店とかの写真を撮りながら歩いていた。周りは温泉街の住宅街でいたってのどかだ。


 そんな事を思いながら、京介につかの間のほっとした時間だと思いながら、愚痴の電話をしながら歩いていた。


 (部屋に戻りたくないなぁ……)


 常にこんな気持ちが外に出るたび、わきおこっていた。


 神経過敏になっていて、嫌がらせ電話がきてもセール電話がきてもすべて近所がやってると思い込んでしまっていた。携帯キャリアも近所と繋がっていて嫌がらせメールをわざと送りつけてくるといいだす始末。


 外に偵察で何回か見てこいと言われるようになったが、気晴らしになるいい時間だとこの時は思っていた。あんなことになるまでは…。


 




 

 


 

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