第64話 通報
昼間窓を開けて掃除機をかけていた時の事だった。
「(ピンボーン)警察です!開けて下さい!」
「えっなんで?」
私と尚文は顔を見合わせ、掃除機を止めると恐る恐る玄関に出た。
「北警察の者です。近隣から盗撮されたと苦情がありまして。庭で旦那さんが上半身裸でビニールプールで子供と遊んでた所を盗撮されたと通報があったものですから、見せてもらいますよ」
「何の話ですか?いきなり。そんな者見てませんけど携帯見せないと駄目なんですか?」
「見せられないようなもの入ってなければ構いませんよね」
頭にきたが、それで気が済むのかと思って携帯を渡した。案の定山や、店しか映ってはいなかったのだが、2.3枚の山と店の画像を消去されてしまった。
「ご協力感謝します。何かあれば連絡下さい」
と言い残し帰っていったが、それから、10分後に掃除機を、窓を開けてかけていたらまた、さっきの警察がやってきた。
「すいません。北警察の者です」
「今度は何ですか?」
「掃除機かけるのやめてもらっていいですか?」
「はい?」
「うるさいんですよ!遠くまでこの音響くんです!」
「掃除するなって言うんですか?」
「そうです!」
「ちょっと事情聞かせて下さい。近所からも騒音の被害の、届けでてるんですよ」
私は、周りの騒音の事を言いたかったが、言った所で許容範囲だから、相手にされないと思い、ここに度々来ている、さるのせいにした。さるが凶暴で、威嚇しにくるので追い払うために音を出してる事にした。
それとそもそも音に敏感な為ここに移り住んだ事も説明した。
理解はしてもらえたようで、「いろいろご事情があるとの事で」と言われその日は、警察に帰ってもらった。
そもそも目の前の、市が運営している物産展の隣には、消防署がついていて毎週1回のペースでサイレンを何度もならすのも尚文には耐えられなかった。
そんな矢先の出来事。静かな山の中の住宅街だからか、少しの音でも響く事は間違いない。でもこれはお互い様だ。工事や、草刈り機、周りの観光客の車の開けしめ、これらもだいぶ響く。
ただ音を出してる所は分散してるのに対して家は一箇所ですべてに抵抗して音を反射するかのようにやり返していた。それが目立つ原因と、敵対視された原因かと思う。
原因が分かっても、尚文の「怖いだから音で返す」気持ちは変わらなかった。警察からやめてと言われてもやめられる訳ではなかった。
その一件いらい尚文の近所に対する思いはますます加速していった。「全員敵だ!」
確かに、その時は私も近所が敵だと尚文と同意見だった。
尚文と、自宅にいないで散歩する事を提案し、1、2時間歩く事にした。国道に出れば、歩いてる人などいない。それを良いことに、危なくない程度に散歩していた。山の中は空気が美味しかった。でも、それと同時に限界を感じていた。
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