第70話 イノシシ狩り
朝早く1台軽トラが庭に入ってきた。尚文は凄く嫌がった。人里離れた所に住んだ意味がないのだ。
「わざわざ人を避けたのに、何でここまで人が来るんだ」
尚文は少しパニックになりイライラしていた。
様子を見ていたら、その軽トラは家の玄関先でUターンをして帰って行った。しかも明け方6時頃の事で、おちおち寝てもいられない。軽トラが、度々来ることが続いたので困って策を練った。
家が借りてる敷地にロープを張った。一応大家さんにも事情を説明して、許可をとった。
解決したかにみえたが、入っては来なくなったものの、今度は別の人が家に訪ねて来た。
「すいませーん、誰かいませんか?」
丁度、朝ご飯を作って奥の台所にいた私に尚文が慌てて誰か来たと教えに来た。私も少し警戒しながら、玄関を開けた。
「狩りをしていたら、犬が逃げてしまって探させて下さい。あと車をUターンしたいのでロープ外してもらえますか?」
との事だった。狩り?何の事だと思いながら、犬が逃げるってどういう事?って思いながら見てたが、断る訳にもいかず承諾したら数分で帰って行った。
良くわからないが、すくなくとも犬を見つけた様子はなかった。
こんな感じで、いろんな人が来るのはごめんだと言う事もあり、ぽつんと一軒家まで来る途中の獣道に、ポリタンクを置きそこに、この先行き止まりの看板を立てた。Uターン出来そうな途中の道路でここに【Uターンお願いします】と書いた看板も作った。
役場に問い合わせして、状況を説明して行き止まりに民家がある場合で、Uターンをそこでされて困る場合の対処方法として、使われていない農道に看板を提示することを許可してもらっていた。
ところがそれが、大問題に発展してしまった。どうやら獣道は月に何回か来る隣県の住民と、イノシシ狩りを毎日してる近場の住民と、週1でイノシシの罠を張っている住民がいる事が判明した。
大家さんから借りた時は、もちろん対人恐怖があり、音が駄目な事を伝えていて、この場所を探していたと伝えてあった。その時は、この獣道は誰も入って来ないし、行き止まりだから誰も通る事はないと聞いていた。
話が違う。
毎日人が来てるではないか。そして、農道に立て看板を付けられた腹いせに、今度は、銃声の音がしたり、夜中も獣道に獣よけなのか、5分おきに音がなる装置をつけられて眠れなくなっていた。
困ってしまって、役場にまた騒音の件と、イノシシ狩りについて相談した。
「◯◯に住んでる者なんですが、夜中に、獣よけの音か分からないのですが、5分おきになる銃声の音が気になって眠れないんです。何とかなりませんか?」
「そこの地域だと、11月から3月までイノシシ狩りしてますね。どんな罠を使っているか確認してみますので、明日9時に会えますか?」
――次の日。
「ここはイノシシ狩りを許可してる山なんです。罠を見る限りでは音はしない感じには見えるんですよね。」
「では、せめて借りてる自宅が突き当りなんですが、そこに時々人が入ってくるんですが何とかなりませんか?」
「猟犬が逃げたり、よくある事なんで奥まで人は入る事はあると思いますよ、それでも入るなっていうんですか?」
「ただでさえ崖崩れで、狭まっていて玄関前しかスペースがないのに、そこで車のドアを急に開けしめされたりされると、困るんです。まして、家に用事がある方ならいざ知らず、不法侵入で訴えてもいいですか?」
私も子供の事を考えると必死だった。
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