第74話 レッカー車

 今回はこれで何度目だろう。夕方一度帰って来て夕飯の食料積んで、あたりが暗くなっても、携帯の充電をしてまた雪の中を出かける。深夜獣道を雪の積もった中を移動する事もあった。 


 周りで音がしたりすれば、かなり雪が積もっていなければ強行手段に外に出ていた。農道と言う事もあり、10センチ以上積もっていれば、除雪車を町に依頼する事が出来る。


 しかし尚文が、極端に除雪車を嫌がった為、何百メートルの獣道を、ひたすらスコップで雪かきし、融雪剤を撒いて道路を確保した。尚文はその間も、音がうるさいというので自宅で、イヤホンをして待機していた。


 私は、この1人で雪かきしていられる時間が唯一の幸せの自由時間だったのだ。友人とメールしたり電話したりしていたが、それも尚文の前だと最近は出来なくなっていた。私は、愚痴を言ってる事も多かったので、どうやら尚文にはその感情が伝わるらしかった。なので、雪かきして離れている間にSNSの友人に相談していた。


 やっと外に出られても、道が細くて、雪がつもり凍ってしまったり、ちょっと脱輪すると脇は崖だったので慣れてない道は、慎重に行かないとすぐ、雪にタイヤがはまってしまっていた。


 そもそも私の車は二駆である。山道には元々適さない。そんなこんなで、出掛けと帰りの道で2回程レッカー車にお世話になっていた。後の1回は京介に来てもらい、脱出していた。


 出掛け先でも、山に避難していた為に、さらに4回くらい雪道ではまって動けなくなっていた。2回はレッカー車に来てもらい、後の2回は周辺にいた人達に協力してもらい抜け出していた。


 その時期ではないが、県外に行った時も6回程はまっている。3回は自力で脱出したが、3回はやはりレッカー車を呼んでいた。


 考えると14回くらい乗り上げたり、はまったりしていた。その都度レッカー車を頼んだり、周りの人に助けてもらったり、京介を呼んだりしていた事になる。


 気をつけて運転していたつもりだが、毎日15時間以上、365日走らせてると、睡眠もとれていなく、疲れが出てきてたのかもしれない。


 大きな事故とか、人を巻き込む事故を起こさなくて良かったと思う。車はボロボロであちこち凹んでいるけれども、自分達も、怪我一つした事なく、何かに守られて来たように思った。


 私の運転は尚文と2人で生活するようになってから始めたようなもので、それまでは長らくペーパードライバーだっただけじゃなく、運転そのものした経験がほとんどなかったが、そんな車が今は私達の生活を支えてくれていた。


 そんな日も毎日続けてれば限界がくる。やはり夜は出来るだけ、何とかして自宅で眠ろうと言う事になった。


 山中の一軒家はどんなに暖めても、寒かった。灯油のポリタンクを5つ常に買って、灯油ストーブと、電気ストーブを用意した。


 毎日、1分1秒息をするのもやっとな生活を送っていたさなか、24時間つけっぱなしのストーブが、明け方室内温度3℃を示して灯油が切れてあまりの寒さに目を覚ました。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る