第66話 不穏な物音

 時々下からドンドンと付き上げられるような音が度々していた。その都度見に行ってみたが、誰か住んでる様子は、伺えなかった。念の為、集合のガスメーターも確認したが、動いているのはうちだけだった。


 それほどまでに、近くでたびたび音がしていた。私も1階に行きアパートの中を窓から、覗いてみたりしたが、誰か暮らしたり、点検に人が入った形跡はなかった。


 ますます、気になって24時間音に対して過敏になっていた。


 1階に誰か入ったら分かるように枯れ葉を玄関ドアの、隙間に挟んでみたりした。だが、落ちたり、落ちなかったりで分からなかった。


 尚文がお風呂に入ってる時も、下から突かれたりするような気がするというので、雪の積る寒い夜、30分くらい外で誰か来ないか、私が毎回見張る事になった。


 結果的には、誰も来たことはないが、尚文が安心してお風呂に入れるならと、息を白く吐きながら、喜んで外で見張り番をしていた。


 そんな中毎日、起きると尚文とNetflixとかで、アニメを観たり、映画を観たり、はたまた、ポータブルゲーム機で、ゲームをしたり、たまにはユーチューブ動画を観ながら、カラオケをしたりしながら2人で遊んでいた。


 外に行く事も、外部との接触も出来ない中、先行きの見えない中、今出来ることで、1分1秒ただただ楽しめる事、生き抜く事を探していた。


 過ごしてる時で夏は、山蟻が、大量発生し身体を噛まれたり、秋は、カメムシの大量発生にてんてこ舞いし、掴んではなげ掴んではなげを繰り返し、時にはカメムシに「ブブブブ」と臭いニオイを出されながら威嚇された。


 春先にはアパート内の誰も住んでない部屋の2件隣の玄関近くに20センチくらいのスズメバチの巣が、換気扇の下に、ぶらさがっていて、見るたびに大きくなってる姿が怖くてしょうがなかった。


 以前悩んでいた、家賃重複問題は、結果的に、中間に入った不動産屋がポケットマネーで建て替えてくれていた。それからどうなったかは知る由もない。


 警察からゴタゴタと近所から来た話は、田舎だからか、またたく間に広がって、それは大家さんの耳にも入り、「トラブルを起こすようなら、来月までに出ていって下さい。」と結局通達されてしまった。


尚文と、私は喧嘩が増え、殴り合いもそれからしょっちゅうあった。行き場のない気持ちを尚文は、壁に穴をあけるという形で、大きく2箇所残した。


 私も外にいけない、誰とも会えない、相談出来ない。先行きが見えない不安から明るい顔ができなかったり、ネガティブ発言ばかりしていた事だろう。


 そんな建設的じゃない私の事も、心の片隅で、世間に迷惑をかけてるのは全部尚文のせいだと思ってた事も見透かされたのだと思う。


 子供の事大好きで、私は一番の味方のはずなのに、心から世間に申し訳ない。子供が憎い。って思ってしまっていた。


―思い詰めていた。


こうなったのは、こどものせいじゃない、私の接し方のせいだ。と今ならそう思う。

こどもにそこまで思い詰めさせて申し訳なかったと。なんで寄り添えなかったのかと。

 いつでも子どもは、考えれば、味方でいてくれていたのに。






 

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