第87話 怒り
「おはよう……あっ運転席にいるのが、元旦那で、尚文の事は知ってるよね」
「おはようございます。どうも」
と半ば困惑気味に、京介はあやのさんに車から降りてペコッと頭を下げた。
「おはようございます」
あやのさんもそう言うと、すぐさま車のドアを開け、後部座席の尚文の隣に座った。尚文と何か会話するのかとおもいきや、一言も話さず、私に声をかけてきた。
「今日どこらへんでやるんですか?どんな人来るのですか?」
「ここから、10分もかからないからすぐ着くと思う。大家さんと、不動産屋が来るって話だったと思うから、変な因縁つけられるのだと思う。相手は、1階の住民の知り合いらしいから、こちらの話聞く耳持ってないんだよね」
その情報は、水漏れ事件の時に尚文が不動産屋から聞いていたらしい。
「知り合いだから下の階の住民が嘘をつく人間ではないから、水漏れはあきらかに201号室の尚文のせいだと言っていたのを信じている」
と言われたらしい事が後から分かった。車の中での会話で知った事だか、尚文は、不動産屋にも、大家にも抗議や、SOSの電話をかけていた事が分かった。その時は子供だからと思われたのか、軽くあしらわれたらしく、相手にしてもらえなかったと、言っていた。
尚文が契約した時に一緒に入った保険の中で、近隣トラブルで住めなくなった場合、一時避難として、別の場所に物件を用意してくれるというサポートがついていた。
それを見た尚文は、利用出来ないか考えて、不動産屋に連絡していたが、「自分でホテル探したらいいじゃないですか」と断られたらしく、邪険にされたらしい。
その事を知った私は、最高潮に頭に血が登って、怒りがMAX状態になって、興奮が抑えられなくなっていた。そんな状態で、現場についたからもう大変だった。
血相を変えて、携帯を録音しながら乗り込んだ高梨一家と、あやかさん。今思うと、戦闘モードだったのは、こちら側は、私一人だったような気がする。そんな私を見て、敵対視する、大家と、不動産屋。上から目線で舐めた感じで、見て来ていた感じがして、私だけイライラしていた。
最初は不動産屋から話始めた。
「電話でもお話した通り、今回警察2回も呼んで、こちらも困ってるんですよ。下の階の人から、高梨さんが来てからうるさすぎて、今住めないって苦情きていましてね、代理の部屋こちらで貸して、そちらに住んでもらっているんですよ」
次は私のターンだ。
「実際借りたのは、1ヶ月半前ですが、あの部屋使ったの、正直引っ越しした当日と、一ヶ月後の、警察呼ばれた2回しか使ってないんですよ。しかも、どちらも部屋に、入ってすぐ呼ばれてるんです」
不動産屋 「証拠は、ありますか?」
私「証拠ならあります。こちらにいる彼女のお家にも泊まっていたし、別の物件にいた時の会話もあります。何だったら、メールもすべて見てもらって構いません」
不動産屋「では、拝見させてもらいます」
不動産屋と大家が私と尚文の携帯をまじまじと30分くらい読んでいた。
不動産屋「これ、コピーさせてもらってもよろしいですか?」
私「はい、どうぞ分かるまでコピーしてください」
その時だった、あやのさんが口を出してきた。
あやの「ああいった物件は騒音とかのトラブルに、よくなるので、尚文さんは私はグループホームの方がいいと思うんですよね」
私「はぁ?今それ関係ある?」
あやの「音ってどっちかっていうと、上の人がフリじゃないですか〜。足音とか下に響いちゃうし、迷惑とか気付きにくいっていうか」
不動産屋があやのさんの言葉を聞いて、うんうん頷くとこう言った。
不動産屋「君、なかなか良いこというじゃないか。ほら、お友達もこう言ってるじゃないか、そもそも、前の物件だって、何で引っ越す事になったのか、なんか想像できるなぁ」
と失笑された。
私「えっ?何言ってるの?あなた何しに来たの?尚文の味方で来たんだよね?」
私は、あやのさんにも不動産屋にも噛みついた。
私「前の物件は、工事で立ち退きで住めなくなったんです。いらぬ想像はしないで下さい」
腹わたが煮えくり返るとはこの事だ!
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