第58話 緊急強制入院

 12人の看護師達に両手両足を掴まれて連れて行かれ、尚文に会えたのは1週間後だった。それまでは、面会謝絶で、久しぶりに会ったときの姿は、尚文は全身、黄色や紫色のアザだらけで、痛いたしい感じだった。


 「あの後、押さえつけられて殴られて、枕で顔も潰されて、罵倒されて、全部脱がされて、オムツされて、膀胱に、チュウブ通されて、ぐるぐるまきに、ベッドに縛り付けられたんだよ」


「そうか…。辛かったね…。」


「殴られた後も、痛くて湿布欲しいって言ったのだけど、もらえなくて」


「湿布はもらえるように言ってみるね」


 自分の不甲斐なさに、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。薬が合うように入院して調整して欲しいと思ったのは確かだったがこんな形になるとは思ってもいなかった。

 

 それから、1ヶ月入院生活が続き、その間1週間おきに会いに行ったり、外出も許可され、2週間目には、外に数時間連れ出したりしていた。病院でも話せる知り合いが出来てラインも交換したようだった。

 入院生活が順調だった事もあり、退院が早めに許可され、ケアワーカーさんと障害者支援事業の職員さんともにグループホームも話も勧められて、出る事になった。


 結局、病名はASDと診断され、その薬が処方される事になった。退院してから、話し合いの候補にあがったグループホームを見学。

 1箇所は、いかにも施設と言った外観で、古めかしい高層の建物だった。約束事が入り口に入るとびっしり書いてあって、それ通りのルーティンで過ごすらしい。4.5畳の部屋が与えられエアコンはない。扇風機や、暖房器具などもなかった。外部に出かけたりする事が出来なく、外部の人が会いに来ることも、なかなか出来ないと言われた。

 内覧の時点で、そこの職員さんから、「ここに来るのですか〜。ここはあまりオススメしませんよ」などといきなり言われたので、行く気力が一気に失われた。

 

 2箇所目の場所は、一軒家でアットホームな場所だった。ペットを飼っていて皆で育てていくらしい。周りも閑静な住宅街で、施設長も今どきの若者に理解のあるダンディなおじさんだった。

 そこで唯一難点な所があるとすれば、そこに入るには、仕事をするというのが条件だった。そして、そこから通える所に見学してみたが、なかなか工場のような所で、耳栓しないと頭痛がとまらないということと、そこは週5日8時間労働だった。

 いきなり今まで働いてなく、体力がない状態から厳しいと思った尚文は結局断念してしまった。


 病院で、仲良くなった知り合いも、連絡入れたようだったが、結局退院してからまったく連絡つかず、また元の生活に戻ってしまった。


 それから、また京介の家から、病院に通ったり、昼間は騒音対策で山や海に出かけたりしていた。


 このままでは、孤立してしまう危険を感じた私は、尚文が興味を持ちそうな、アニメサークルや地元の趣味の集まりがないかなど調べたりしていた。私も一緒ならば安心して行けると思ったからだ。

 さっそく見つけた私は主催者に問い合わせして、行く約束をとり尚文と楽しみにしていた。

 

 




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