第103話 決断
「またあいつが来るかもしれない…どうする?」
「もし来るとしたら、6時頃だろうから5時50分頃に玄関前に出てみるよ」
「うん、分かった」
前に泊まった時の事が尚文には忘れられなかった。朝方玄関前を威嚇されるような感じで走りぬけ、階段を何かで叩かれた音。恐怖でしかなかったのだ。前の日の夜寝る前にこんな会話をして眠りについていたのに、夜中下の階から、変な音がしてろくに眠れていなかった。
朝方目が覚めると、私は玄関に出てみた。
「うーん、寒い」
まだ2月の外の空気は冷たかった。辺りを見ても誰かいるような気配はしなかった。30分外でぼっーとして部屋の中に入った。
またこの頃の記憶が今の私にはすっぽり抜け落ちて覚えてない。
記憶にあるのは、何が起きたのか分からないが、尚文の興奮が最大になり壁に蹴りを入れたり、ペットボトルを壁に何度も打ち付けていた。カーペットを全部剥がして、重い家具を全部よけて、床に両足でジャンプしていた。尚文は顔を真っ赤にして、何を言っても耳に声が届いてない感じだった。
壁は穴があくし、尚文の興奮は落ち着かなかった。尚文が、アパートの前の細い道路に路駐してる車があるか見に行けと私に指示をしてきた。何故なら車で出掛ける時に誰にも見られたくないからだ。私はすかさず、バックを持ってそのまま、尚文のもとから消えた。
もう私の手には負えない。
何度そう思ってきた事だろう。これで何回目なのか。そう思いながら、私はパニックになっている尚文を1人残し自分のアパートに戻った。
尚文からのめーるや電話は一切受けなかった。私が会わせていた友だちに尚文からメールがいったらしく、友だちには心配をかけてしまった。私を心配して友だちは今も力になって、励ましてくれている。私は幸せものだ。
尚文はその後、京介に連絡をとり迎えに来てもらって事なきをえたようだった。今は一緒に住んでいる。
私はと言うとそれから、情緒が不安定で落ち着かなく、時間があれば尚文の事を考えて涙がとまらなくなっていた。
落ち込み気味で尚文にも感情が伝わってしまうくらい何かを飛ばしてしまうので、誰かと会って時間を過ごして気持ちを紛らわせていたかった。
そこで、SNSで沢山の出会いを求めた。
1日に2人と会って、1ヶ月毎日とにかく誰かと会い続け、家にいる時は、夜中も誰かと電話やメールで繋がっていた。大きなイベントも自分で開催した。アニメのオフ会や、ダーツ、アニメカラオケ、ボートゲーム、推し活、キャラカフェ、女子会、神社巡りと、かなりのイベントを主催し、それなりに人数も毎回集まっていて、全てを忘れるかのように楽しんだ。
かなり充実した3ヶ月間だったと思う。
その時に、1人の男性と知り合う事になった。
追伸
今思い出した。
尚文が興奮した理由を。
私が外に見に行った時に、京介に電話をしたのだ。その時に、「今度、尚文が暴れて興奮したら、私は出て行く」って話を後ろで聞かれていたのだった。
悲しくてまた母親は、裏切るのかって思いで暴れて壁に穴あけたのかもしれない。
尚文が暴れた原因は私だったのだ。
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