第52話 実家に戻る
雪がうっすら積もっている2月、寒さが堪える早朝に、誰にも見つからないように、そっとアパートを猫を連れて、抜け出した。
昨夜の騒ぎでまだ警察が、待機してるかもと思い、あたりを警戒しながら、車に荷物を詰め込んだ。
今回京介の所に戻るしかないと言い出したのは、尚文だった。なので、とりあえず、京介に一部始終事情を伝え、受け入れてもらったので、帰る事にした。
その後、何度か尚文とアパートに戻り引っ越しの片付けをするのだが、尚文はアパートに近寄れないとの事で、近くのアミューズメントの駐車場で待機をしてもらい、荷物を片付け退去の手続きをした。
不動産屋にも警察からは連絡が入ったらしくそういう事を起こされた方は、入居させるわけにはいかないと言われてしまった。
もちろん、退去するつもりでいたので問題はないのだが、また1つ不動産屋を使えなくなってしまったと思っていた。
新築という事もあり、猫の爪痕などの指摘をされ、10万の請求が退去する時にされてしまたが、昔の解約時に50万近く請求された事を考えればたいした事ないのだが、だんだん経済的余裕も厳しくなっていたので、頭が痛い話だった。
そんなこんなで、また京介との3人の生活が始まった。一連の事もあり、尚文の病院では今薬で興奮する事があるように思えて、薬を合わせる為にも、1週間おきに病院に通院する事になっていた。
怒りがどうしても抑えられない。コントロールが出来ない。そう、私は尚文に感じていた。
尚文は小学生の頃から親の手のかからない凄く頭の良い子供だった。今とは考えられないほど、陽キャラで、友達も多く皆を引っ張って行くような子供時代だった。友達の家に毎日遊びに行ったり、連れてきたり。忙しい生活を送っていた。
ところが、小学2年の時に仲良くなった同じマンションの子が、毎回尚文の私物を盗みだしたり、尚文が学校を休むと集合ポストに、学校のプリントを入れて、その上に毎回おしっこをしたり、イジメが加速していった。
同時期に、塾でも数学の字が汚いと、先生に指摘を受けてから、字を書くのが恐怖症になって、ノートを一行書くのに20分かかるようになっていた。
学校でも、担任の先生が国語の教師で、帰ってくると、ノートに書いた尚文の漢字練習帳は見事に全部赤ペンで全部やり直しで、さらに毎回10ページの書き取りの宿題を出されていた。
作文の宿題は地獄だったようだった。それでも朝まで、寝ずに頑張って書き上げて提出していた。
そんなに努力しても、小学校ではイジメが加速し、家の鍵が盗まれたり、作った図工の作品の一部が盗まれたり、習字道具が盗まれたり、日常茶飯事だった。
学校に授業にならないのと、鍵っ子だった尚文の鍵が盗まれたりするのは困ると抗議するも、「今度、今度生徒に話します」と全くモンスターペアレント扱いされる始末だった。
ところが、数日後別の子が、上履きがなくなった時にお父さんが、学校にどなりこんだらしく、その時は学校はすぐさま、全校集会を開いた、と聞いたから呆れてしまった。
こうも、父親と母親の違い、影響力が違うのかと思うと悲しくなってしまった。
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