第51話 新築アパート
11月になり、だいぶ寒さが身にしみる季節になり、雪がチラチラ振り始めた頃、お世話になった山小屋と名残惜しくも、猫サロンのオーナーさんにもお別れして、新たなる物件へと引っ越した。
新しい物件は新築ではあったが、8畳と狭く、クローゼットも奥行きが15センチと狭い収納しかなかった。
ペット可物件との事だが、よく考えたらどうやってペットをかうのだろう。そう思うくらい物も置く場所がなく猫を連れてきていたがトイレを置く場所とかかなり悩んだ。
お風呂とトイレは別で洗面所もついてたのは良かったのだが、台所も狭く2人用の部屋と案内された物件だか一部屋だけだし、かなり尚文と住むには窮屈だった。
あまり考えずに急いで決めた物件ではあったが、猫も飼いたかったのと、費用も抑えたかったので文句は言ってられなかった。
最初の1ヶ月はそれでも快適になんとか暮らしていた。
ただ買い物は山での生活の時は、人があまり来なかったので、近所の薬王堂に食品を買い出しに行っていて、その間尚文は駐車場で待っていられたのだが、街に引っ越してきたので、今度は出来なくなってしまった。
仕方なく、生協の宅配に切り替えて頼んでみることにした。
そんな矢先、アパートの斜め下に男の人が入居してきた。家が201号室で、その家が102号室。そこからが大変だった。
駐車場代を支払い、いつも止めている場所に、102号室の住民が止めてたり、それを大家さんに言うと、対処として立て看板をつけてもらったのだが、いつの間にか、看板が放り投げて捨てられたりした。
そのうち、自宅に帰ると壁をドンと叩かれるようになった。最初は気のせいかとスルーしてたが、2、3回続いてされて尚文がブチ切れた。やり返しだ。足蹴りだ。壁に向かって倍返しする。そして、お互いヒートアップしていく。
あまりに酷いので、昼間は出来るだけ自宅にいないようにまた車で外に出る事にした。
外食だと身体にも悪いしお金もかかるからと毎日お弁当を作って、山に行く事になった。
――さらに1週間後。
真下に住民が入った。101号室だ。
毎回夜に帰ってた私達は、静かにお風呂に入って寝る準備をする。それだけの事なのに、今度は下から棒でつつかれる振動がくる。
私も尚文もまたノイローゼになっていた。
その振動は、下手すると夜中の、3時頃まで続いてる。寝不足だ。眠れない……。
また切れた尚文の逆襲は止まらない。尚文はいつの間にか竹刀をネットで購入していた。下に向かって竹刀で、つつき返していた。その音に反応するかのようにまた斜め下から壁ドンが始まる。尚文は壁にも向かって蹴り上げる。された数の倍返しで。
深夜という事もありなり響いていた。
「もう、いいでしょう。それくらいで、やめなさい」
「はっ?ふざけんな!てめえもアイツラの中間か!ならこうしてやる!」
と尚文を止めようとした私は押し倒されて、掴みかかられ、怒りで何度も殴られてしまった。
あまりの痛みに叫んでしまった私の声で、下の住民が警察を呼んだ。
――40分後。
警察が来て何度もインターホンを鳴らしていた。私は出れなかった。
痛みと、怖さと、今出たら尚文を訴えてしまうことになるんじゃないかと思い出れなかった。
尚文は警察が来たことで冷静になれたようで眠ってしまった。
警察は玄関越しで2時間くらい叫んでインターホンをずっと押していた。
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