第15話 思わぬ電話
突然その電話はかかってきた。
知らない女性からの電話。声の感じでは20代半ばから30代か。
思い当たるフシはまったくない。
「あの……妹さんでしょうか?」
「ええ、そうですが」「あの、お兄さんが倒れたんです。今、仕事から帰って来たら、なんか倒れていて意識がないみたいで……私どうしたら良いか……」
その声は、とても動揺して、パニックを起こしているように思えた。
「お、落ち着いてください。まずは、救急車呼んで。病院がわかったら、また連絡して。すぐ私も、そちらへ向かいますから」
「分かりました。お願いします。」
連絡の電話から30分後ーー。
「◯◯◯脳外科に、搬送なります。お願いします。」
しっかりした口調で私に対応してくれていた彼女は誰なのか。
それもわからないままで、兄の安否も私は不安でたまらなかった。
兄は一年前、母が亡くなった時に私と一度会ったあと、その後は行方不明となり、捜索願いを出していた。
その兄に何かあったらしい。
驚きは大きかった。
それと、一年前に同じように母が急に倒れて亡くなっていたこともあり、不安は増すばかりだった。
タクシーを大急ぎで呼び、私は教えられた病院へ駆けつけた。
病院では、救急の受付で連絡をくれた彼女が待っていた。
どうやら、兄の手術の同意書に、私は親族として名前を記入しなけければいけないようだ。
家族の私だけが、医師に呼ばれ、手術の説明を受けた。
万が一手術が失敗しても承諾しますという内容の書類に私はとにかくサインした。
兄の彼女と、ひたすら手術が無事終わるのを待っていた。
その間に私は、兄と彼女の関係について話を聞いた。
彼女は五年前、仕事場で兄が先輩で彼女が後輩という立場で知りあったようだ。
今は、同棲している彼女という事で兄は猫2匹を飼って暮らしているとの事だった。
最近私が、母の遺産を兄に半分手渡した事で、兄は仕事を辞めたそうだ。
どうやら兄は高校の時から家出少年だったのだが、母の死で生きがいも失ったことも、仕事も辞めてしまった原因に思えた。
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