第9話 新たなる生活
夫と別居して、新たに見つけた新居。
間取りは六畳二間。
お風呂場とトイレは、ユニットバスタイプ。
タイル貼りの浴室の隣に、室内に洗濯機を置く感じ。
なにより、尚文の高校の近くの物件なのが好印象の部屋だった。
今どき、エアコンもなくて、ボロいアパートなのは気になるところ。
ただし、四階建ての最上階の角部屋。
(これなら、マンションの時みたいに、上の階の音で悩まされる事はなさそうね)
そう思って、安心して入居した。
生活してわずか三日目の夜中の一時。
ガタン、ガタン、ウィーン、ガタガタ
「あれ?」
部屋の下から物音が響いてくる。
どうやら洗濯機を回してる音らしかった。
(ちょっ、こんな時間に洗濯?)
布団を頭からかぶって音を聴かないようにがんばってみた。
我慢していれば止むのを期待して。
だが、その音は断続的に、明け方の四時頃まで続いていた。
次の日の夕方には、二階のと三階の部屋が、どちらも窓を開き、まるで音を鳴らし合ってるかのように思えるほど、凄まじい音がしていた。
そんな日が続くなか、私たちは、荷物を自転車で前に暮らしていた自宅から運んだ。
大きな家電をインターネットで注文して選び、新居で暮らす準備を始めた。
引っ越しが秋だったので、すぐに寒くなる。
暖房器具がないので、慌ててさらにストーブを購入した。
それでも、スイッチひとつで、温まるエアコンのマンション生活に慣れていた私には、快適とは言えなかった。
生活用品が揃い始め、ちょうど一週間が過ぎようとしていた頃だった。
また真夜中に、あの音が響いた。
ウィーン、ガタガタ、ウィーン、グルグル
この音が明け方まで続く。そんな毎日が訪れるようになった。
そのうちまた私は寝不足になり、一睡も出来ず悩まされてきた。
私は困ってしまい、夜中の騒音を録音をした。
それを大家さんと不動産屋に聴かせて、相談することに。
「あの毎日、この音に悩まされて、本当に眠れず困ってるんですよ」
「わかりました。下の階の人に、確認してみます」
確認してもらうと、その時間は寝てますと、解答があったらしい。
あまり遅い時間だと訪問に行けないと、大家さんからは断られた。
「警察に相談していいですか?」
大家さんにそこは確認とって、許可をもらっていた。
音が響いている状況になったので、夜中に警察に通報して、部屋に来てもらった。
「◯◯◯派出所です。どうされましたか?」
「日常的に、夜中から明け方まで、近所の洗濯機を回す音が、本当にうるさくて」
その時は音が一時的に止まっていたのだか、
二時間近く話しているうちに、また例の洗濯機のような騒音が響き始めた。
「あの、この凄い音なんです。ずっと、いつもだと、ひっきりなしに、明け方まで続くんです!」
「う~ん、まあ、聴こえるけど……これは、上から響いてるんじゃないか?」
「でも、上に部屋ありませんよ」
「……まあ、そうだよね」
警察官は、私を説得させるかのように
「かりに下の人が洗濯機を回していたとしても、夜中だから、注意しにいけないよ」
「人それぞれ、生活パターンが違うから夜中でも洗濯する人もいるから言えないよ」
「これはあまり言わないで欲しいんだけど、周りの人は、やられたら、みんな、やり返してるもんだよ」
「警察は、民事不介入だから、見回りくらいなら、出来るかもしれないけど」
その警察官との会話のやり取りと内容を、尚文はしっかり聞いていたことで、影響を受け、のちに事件が起きていくのでした。
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