第121話 クリスマス

 彼が帰ったのは秋の事。その後大喧嘩というか、一方的に私がまくしたてて彼が聞いていた。話をちゃんと聞いてくれてる彼は大人なのかなぁと思っていたが、実は後から知った事だが金銭面でとんでもない事に巻き込まれて、弁護士沙汰になっていた。

 今思えば、多分私の話など、右から左に聞き流してたのだろう。 

 そんな事も知らず、毎朝決まった時間に連絡がくる彼に普通になんの疑いもなく、私の話を受け止めてくれたとポジティブに解釈していた。お気楽なのんきな私だ。

 11月に愛媛から箱でミカンを頼んだ。沢山買ったので彼にも送ってあげようと、段ボールに、ミカンと、地域のお菓子と3,000カロリーのカップ焼きそばとどん兵衛2種類と手紙を添えてクール宅急便で送ってみた!


「ミカンだけって言ってたから、お菓子とか、カップ焼きそばとか、どん兵衛とかびっくりしたよ」


「良いチョイスでしょ?」


「この焼きそば食べるのはちょっと勇気が入りそうだけどね」


「よく、ユーチューブ動画でやってるやつだよね!食べたら実況中継してみてよ!」


「えっ~、別々に小分けに食べよう」


「まあ、好きに食べていいけど、ふっふ喜んでくれて良かったよ」


「ミカンも食べてみる」


「ビタミンC沢山とってね」


 この時は凄く喜んでくれた。初めての贈り物だったのもあるかもしれない。来月はクリスマス。

 本当は直接会いたかったんだけど、彼は息子さんがいて、息子さんの誕生日がクリスマス前日。その為、金銭的にも余裕がないと聞いていた。しょうがないと、諦めてなにか、してあげられないかとプレゼントを考えていた。


 そんな時に、冬なのにレンジが壊れて困ったと言っている彼がいて、節約生活をしてる彼には家電を買うのは夢のまた夢の話だった。

 困ってるんだろうなと思い、ちょっとでも助かればと思い、炊飯器のプレゼントと、彼が夏に一緒にいた思い出を20枚を一冊のフォトブックにして、メロディ付のクリスマスカードを添えて送った。


「びっくりしたよ、こんな高価なもの、思わずうちじゃないので受け取り拒否しますって言う所したよ」


「びっくりさせようと思って、言わなかった、受け取ってもらって良かった」


「炊飯器もともとないって話してたからね、あったら便利とか言ってたしね」


「そうだよ、一人暮らしの基本家電がないような気がするよ」


「レンジあった頃は気にならなかったんだけどね」


「炊飯器あると節約にもなるよ、ガスコンロもあると便利だよ」


「もともと、一人暮らしだとお弁当とかお惣菜とか買う事も多いのかもしれない」


「なるほど…」


「身体にもいいから、作ってみたらいいよ。沢山食べれるし、節約になるし」


「料理好きたがら、作ってみる」


 彼は私のアイデアにのってくれた。けど、クリスマスプレゼントの、フォトブックの方には、あまりチラって目を通して、そっとしまってしまったらしい。「えっ~なんで?響かなかった?」「思い出は過去のものに…か」それと、彼からのお返しの手紙は来なかった。


 一応催促してみたのだけど。恋人出来て、初めてのクリスマスなのに、何もなし。手紙くらい欲しかった。やっぱりこれは終わってるのか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る