第46話 別れ
土日に限り車を出せばいいかと思いきや、近所の物音が気になり始めていた。
自宅の斜め下が、空き地になっていたのだが、ある日そこに代行の会社が出来た。看板が立てられ、タクシーのような代行と書いた車が敷地内に10台くらい並んでいた。
代行は夕方から、電気が付き明け方まで活動する。度々ドアの開けしめがしていて、そこら辺一帯は外灯で眩しく照らされていた。
京介の買った一軒家は、閑静な住宅街だ。こんな一角に代行業者の会社が出来るなんて誰が想像出来るだろうか?
それでも、田舎の代行業者なので、頻繁に車が出入りするわけではなかったが、静けさの中の音は逆に怖いくらい、その都度鳴り響いた。
たまらなくなり、役場に近隣の騒音の事で何度か問い合わせをしたが、訪問に行ってみますと言われ、昼間に来られても分かる訳もなく、改善はされなかった。
そんな事が続き、夜もなかなか寝付けず、昼間も近所の行動に不審をいだいていた尚文は、また毎日車を出すことを望んだ。
「隣が午前中に出かける前に車出してくれないかな?眼の前で車乗り降りされるから頭痛くなるんだよね」
「そうか、分かった」
と言うしか良いアイデアも見つからず、車を出すしかなく毎日また、あてもなく山中をさまよう事になった。
私も尚文も正直疲れはピークを超えていたと思うが、ただその時出来る事を毎日こなしていた。
そんなある日、平日の早朝に花火が、なり飛び起きた。近くにゴルフ場もあるので、電話で確認したが、イベントの日は確かに花火を上げるらしいが、その日はならしてないとの事。
役場に確認したら、近所の公園で、早朝に個人的に鳥よけで爆竹をやっているおじいさんがいる情報があると言われた。
それが原因かは分からなかったが、車の中で尚文と大喧嘩をしてしまった。
「平日も花火なったのだから、明日から毎日早朝5時にまた出てもらうよ」
「もう、行く場所もないし、正直ほとんど寝てなくて疲れちゃったから出歩くの難しいのだけど。」
「こんな状況で、よくそんな事言えるな、寝てないのは俺の方だろ!それに車で出ればいくらでも寝れるだろ!場所を探せないのはお前が誰か来るたび逃げてるせいだろ、戦えよ」
「………」
「分かった、お前がその気なら」
車のフロントに置いてあった私の(携帯電話を取られ)
ガチャン―
車のドアを開けて尚文が飛び出してどこかに行ってしまった…。ここは、田舎の山の中だ。普段なら探しにすぐ戻るのだが、私は戻る体力も気力も残されていなかった。
私は車の中で1人しばらく呆然とし、これからどうしようか考えてた。携帯のナビで近所も移動するくらい携帯がないと何も出来ない。その携帯が今はない。
もちろん電話もかけられないし、番号も記憶していなかった。
取り残された私は、取り敢えずバイパスに向かって走りだした。街に向かおう。それから、少し頭を冷やそう。
尚文を置き去りにしてしまった事の罪悪感はあったものの、余裕がなく、自分の事を考えるだけでやっとだった。
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