第96話 新しいスタイル

「ここには、前みたいには住まない事にする。またすぐ追い出されてもこまるし、大事な時だけ居ることにするよ」


「ん?そうなの?ここには住まないの?じゃあ、普段はどうするの?」


「親父の所にいるつもり、どうしても居られない時だけこっちに来る。一応、ライフラインは契約しておくけど」


「そ、そうなんだ……」


「パパはその事知ってるの?」


「知らないと思う、でもとりあえず生活できるように荷物だけは運んでおく」


「そう」


 引っ越しの当日。


 そこのアパートは、4階建てで階段しかなかった。引っ越しの荷物は全部手で運ぶしかなかったが、尚文は外の人に見られたくないと言って、車から手ぶらで降りて部屋に行き、部屋の奥でとじ込もってしまった。


 さあ、大変だ。車一台で収まりきらない荷物を私が全部この階段を1人で往復するのか。考えても仕方がない。やるしかなかった。手や腕、肩が壊れるのではないかと思いながら、やりきった。玄関の中に運んでも、奥まで運ばないと、荷物が溜まっていくので、靴をその都度脱いで運んだ。


 尚文は、それでもなお遅いとか、静かに運べとか注文してきた。何にも手伝わない上に、文句まで言われて、イライラしてきたが、言い返す体力も、勿体ないので我慢していた。


 結局、前のアパートからそのまま持って来た荷物が、車二台分あったのだが、それを今度は寝れないので、クローゼットの中や、台所に片付け方をした。


とりあえず、その日は京介の自宅に戻る事にした。後日改めてまた、アパートに来ることにした。


 京介の自宅の周りでも相変わらず、近所がうるさかった。斜め下の代行では朝から夜まで、工事をしてるし、隣の家は最近売りに出したようでリフォーム会社が来て工事が入っている。その隣は家が帰るたび、玄関から出てきてこちらを観察している。玄関先の自宅は、何時にお風呂に入ってもそのたび、車を出したり、枕をすごい音を立てて「パンパン」叩く。裏手の家は、台所に立つと決まって、毎回物置の開けしめを盛んにする。これがルーティン化していた。


それが、ストレスになっていた。


 目の前の私道も、めったに通らないはずなのに、なだらかな坂道なのだが頻繁に代行がふかして最近よく通るのが気になっていた。


 それに加え、たまに夜中変な音がしている事が最近あった。クラクションだ。近所で鳴らしてるらしいが、もう夜中の1時だ。眠れない事があった。後尚文には、遠くで照らしてるライトが家に向けているライトのような気がしてしょうがなかった。わざと照らされてるような気がして狙われてるような気がして眠れない日々が続いていた。





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