第31話 変な話
不動産から電話がきた。
「お宅の隣の崖下の家が車を停めてもいいと言ってくださってるのでお礼に行ってください」
「ごく普通の家の庭に停めるのは、逆に不安しかないのと、崖下隣とは言え、離れてるので不便なんですが…」
「そこしかないんです。そこは、私の友人宅で、私がわざわざお願いしたんです。わがまま言わないで下さい。宜しくお願いしますよ」
強引に電話を切られた。
「はぁ……」
ため息しか出なかった。
これからどうしたものか、今からまた引っ越すのも考えると、猫も迎えた事だし正直大変だった。
泣き寝入りしかなかった。
私は、京介に事情を説明して、崖下の家に置かせてもらうか相談した。
京介としては、知らない所に車を置くのは心配との事で反対された。
仕方なく崖下の家に菓子折りだけでも持って行こうかと用意したが、なんとなく行けず、数日経ってた。
そんな矢先、崖下の家から朝7時頃、
「ガラガラ~、ゴットーン」
「キーン、キー、キー」
「ガッシャーン」
今まで聞いた事がないような音が鳴り響いた。
見るとダンプカーから、冷蔵庫や洗濯機、テレビやテーブルを放り投げ、山にしてるではないか。
「えっ!」
次から次へと運び込まれる家電や、家財。
そこはたちまち資材置き場になり、1日中運び込まれては、山積みにした。
その中から細かくするためにチェンソーのようなもので、ギーと音をあげて、夜遅くまで切っていた。
それは、その後も土日も休むことなく、土砂降りの日も朝7時から、夜8時頃まで毎日続いた。
(音に悩まされて引っ越して来たのに、またしても音か……内覧に来た時は、全くそんな雰囲気もなく、不動産にも音の事を確認したはずなのに……まして、確か崖下は不動産のオーナーの友人?とか言ってたはず……駐車場の事にしても、またしても……)
なんかまた騙されて利用された気持ちでいっぱいだった。
子猫を迎え、心機一転ここで、尚文と引っ越さないで頑張ろうと思っていたのに。
しかし隣は、朝4時に相変わらず愛犬を1時間しっかり鳴かせてるし、7時になると逆隣の崖下の家がガンガン夜8時まで音出してるし、時期的に9月だったからか、早朝3時頃から近所で草刈りの音もたびたび聞こえてた。
生活音と言えば生活音かもしれないが、静かな場所を目指してきた私達にとっては地獄のような場所でしかなかった。
またノイローゼになっていた尚文の気を紛らわすため、子猫を置いて朝早くから夜おそくまで車で外にいる日々が続いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます