第72話 ヘリコプター
新しい新居も探さなければならないが、まだ前の住んでいた物件の引っ越しも済んでいなかった。つまり契約をしたまま2重で家賃を支払って暮らしていた。
その年は特に雪も多く、この山の中の一軒家に移り住んだ時点では、前の自宅の引っ越しは困難だった為だった。(前の県境のアパートも雪が1メートル近く積もっていた)
大家さんが工事をするように依頼をしたのも多分、よしなかという人を納得させるために動いた、策の一つだったのだろうと、今では思った。よしなかという人はこの町では意外と有力者らしい。
田舎とはそういう所だ。
ここに住んでから、Dr.ヘリが頻繁に飛んでいた。それだけではない、自衛隊のヘリも7、8機並んで5分おきに飛んでいた。「何事?」ひっきりなしに飛んでいる。朝から夜中まで休みなく飛んでいる日が続いた。
自衛隊に問い合わせしても、防衛省に問い合わせしても、ここの上を飛んでいないとの回答だった。しかし、明らかに尋常じゃない数のヘリが飛んでいた。
山の上だった為に、へりのお腹が見える形で真上を間近に飛んでいた。正直、頭に響いて、まいってしまっていた。
昼間はヘリの音に悩まされ、夜は謎の銃声か爆竹音に悩まされ、時々昼間、人が犬を探しにやってくる。そして、今度は近くの山で、大規模な電柱工事に木の伐採、そして極めつけは、目の前の崖崩れの工事。
音から逃げて静かに暮らす為に、探し求めたのに。正直まいってしまった。
とりあえず、次の物件を探しだすまで、ここにいつまで暮らせるかという不安と、工事のために、役場から人が視察に近々来ると言われた事が気になっていた。
毎日昼間も自宅にいられなくなり、外に車であてもなく出かけて、夜中も寝れないので車中泊を繰り返した。車中泊をする為に、毛布やキャンプ用の寝る時の、痛くない様する為のエアーマットや、ライトを複数購入した。
車中泊が続き、快適に過ごす為にユーチューブ動画で、キャンプ動画を観まくっていた。必要な物を揃えたり、知識を蓄える為だ。
いろいろ調べた結果、ポータブル電源があると便利だと行きついた。値段が、ピンキリだが、ある程度の料理をしたり、電気毛布を使ったり、換気扇を付けたりするには、1000Wくらいは必要だと思った。価格は10万前後。震災の時も使えるという。ソーラーパネルで電力を確保出来る物もあった。
結局資金がなかなか貯められず、買うことはなかったが、とりあえず毎日出来るだけ資金がかからないように、外で生活していた。
そんな生活を繰り返してると、尚文に異変がおきてきた。車で国道を走ってると、助手席側から出てくる車がいると、避けるように尚文から指示され始めた。つまり手前で曲がるとか、止まるとか何らかの対策をとれと言われた。
もし、それが間に合わなかった場合、否応なく運転中に私に顔面パンチか、髪の毛を引っ張られた。
左側で工事があったり、人が立ってたり、歩いていたり、左側に路駐している車があっても、避けるように言われた。1、2月という事もあり、あちこちで工事していて、すべて避けて町から出られなく、ぐるぐる周って1日が潰れた日もあった。
尚文の状況はまた少しずつ悪くなっていっていた。
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