第29話 猫を迎える

 ある日、スーパーの駐車場で、いつものように朝早く車の中で休んでいると、駐車場の一角でテントを張ってなにやら、猫が沢山いることにきがついた。

 

 猫が大好きな私は、尚文に


「ちょっと見てきていいかな、猫いるみたいで少しだけ見てくる」


と言い残し、強引に車から降りて小さなイベント会場に見に行った。

そこで、あるアイディアが浮かんだ。


 猫を飼ったら何か変わるかもしれないと。

 無謀な挑戦のような所もあったが、猫がいれば、引っ越しをそうそう出来なくなるから状況も変わるのではと考えた。


 私は胸が高鳴り、もともと猫が大好きなので新しい家で心機一転1からやっていこうと、気分を入れ替えるため、保護猫を迎える事にした。

 

 運良く今は一軒屋なので、飼う環境には適していたし、昔から私は猫と暮らしてきたので、飼うのは凄く楽しみにしていたのだ。


 これで尚文も情緒が安定して、落ち着いてくれて、パニックになる状態も改善できたらと期待もしていた。


 尚文にも承諾を得て、次の譲渡会の日に猫を飼う気持ちを決めて、心踊る思いで見に行った。


 エイズキャリア持ちで、喉が弱く嘔吐しがちだけど可愛い、ツンデレなキジトラとちょっと寂しがりやで、相棒が貰われていってちょうど、1匹残ってしまった黒猫ちゃんを引き取る事にした。


 2匹ともだいたい同じ歳で、どちらも女の子だった。

 契約書を交わし2週間後くらいに家にくる予定になった。

 それまでにいろいろ準備しておくように言われて、ゲージや、トイレ、餌、給水器、おもちゃ、キャリアケースなど、あと目隠し用のバスタオルなど、いろいろ準備して待っていた。


 猫が来た当日、いろいろ注意を受けた。

 里親さんの愛情有り余っての事だと思う。

 ゲージの大きさが足りないとか、トイレの砂の種類とか、いろいろこだわりがあったらしい。

 決して2週間はどんなに鳴いてもゲージから出してはいけないと教わり、1ヶ月はお試し期間と言われ帰っていった。


 最初はバスタオルをかけ安心させてたけども2.3日たった頃少しだけ餌の時間以外にバスタオルをあけてみた。

 「ヴー、シャー」

思わず、またバスタオルをかけた。

めげずに、餌をあげていたが毎回、「シャー」と言われ、小さい身体で、凄い威嚇する子猫。

 渾身込めて威嚇してくる。

これが2週間続き、ご飯をあげるたび、トイレを掃除するたび、引っ掻かれそうになりながら、威嚇されつづけた。

 さすがに、少しめげてきていた。

3週間たとうとしてきた頃、そっと入り口を開けてみたら、恐る恐る出てきて、近くのテーブルの下に逃げこんで、出てこなくなった。

 餌で呼び出しても出て来ないが、私がいないと食べていた。

 今考えると少しの間、猫に没頭できた唯一の幸せな時間だった。

 

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