第28話 家探し
夫の京介とは、時々尚文の事で連絡をとっていた。そのたびに
「側にいるわけじゃないから分かるわけないだろ」
「俺にどうしろっていうんだ」
と怒鳴られていた。
京介の言ってることも今考えればごもっともかもしれない。
その時は、辛すぎて気持ちに余裕がなくなると、どうしようもない気持ちを聞いてほしくて、つい京介に電話をかけていた。
そんなある日、京介から連絡があった。
マンションが高値で売れたから、尚文と私が住んでいる、田舎に引っ越してくると言ってきた。
田舎暮らしをあまり上手く過ごせてなかった私は、おすすめはしないと思った。
一応アドバイスとして、田舎暮らしの難しさを説明はしてみたが、税金とか今後の事を考えると田舎の方がいいらしい。
私と尚文が住んでた場所の隣町の物件や、2つ隣の町などを京介は内覧していた。
その物件に付き合って欲しいと言われただけでなく
「尚文が住める物件、もし見つかったら一緒に住もう」
と言われたので、その時は夢と希望を抱いて、私たちは一緒に家を探した。
震災の影響で住宅が浸水した跡が残ってる物件とか、自宅で家族が亡くなった人の遺影が残されている物件を売りに出していた。
ほぼ、倒壊してる物件もあった。その中でも、一軒だけ高台の角で、片側の隣は近いけども反対側の隣は、空き地で、立地的に条件がいい物件があった。
京介は、その家を気に入らなかったようで今回は見送ると言っていた。
私は、今住んでる借家の物件では、隣人には車のドアの開け閉めの音で毎日起こされ、向いの住民にはストーカーされていた。
日中でも、車のパンク、自転車へいたずらがあり、ほとほと困っていた。
その後も、向かいの住民が夜中に、エンジンをふかし、遠目でもわかる感じで、ライトをこちらの家の窓に向けて照らしているのが気になっていた。
この事を京介に事情を説明したが、信じてくれなかった。
そこで、夜間に家の前に停めてある私の車で京介に待機してもらった事がある。
すると、その夜はなぜか向かいの家は出て来なかった。
そのかわりに、普段入ってこない警察官が、懐中電灯を照らしながら車に乗ってた京介を照らして
「誰だ貴様、そこで何してる?」
と質問してきた。
「……はぁ」
思わず私は、ため息しか出なかった。
向かいの住民に通報されて警察がきたのだと思った。
すべて悪い方向にいく。
「私の家の車ですが、何か?」
「紛らわしい事しないで下さい」
そんなやりとりが警察官とあったらしい。警察官にはそれ以上はもめることなく帰ってもらった。
そんな事がある近所だから、私は早く引っ越したくてしょうがなかった。
私と尚文は京介が見つけた最後の物件に引っ越す事にした。
引っ越してから1週間。
今回は引っ越しの挨拶もしっかりしたし、問題ないだろう。
1件あたり2000円超えの代物だし、金額じゃないかもしれないけど、ちゃんとしておくに越した事はない。
あれっ?
なんか、おかしい。
お隣さんの様子が、まず変な事に気がついた。
お隣さんは犬を飼ってる。だが、毎朝4時に1時間しっかり遊ばせるのか、早朝からずっと吠えさせている。
土日になると、反対隣の空き地でバトミントンする高校生らしき子の事を
「こうちゃーん」
「こうちゃーん」
と呼びながら遊ぶ。
時々、バトミントンの羽が家にビシッビシッと当たってる。
自宅から、道路に車を出す時、お隣さんと同時になると、何が何でも先にお隣さんが出ようとする。
お隣さんの門の両端に、菊の造花が華やかに並べて飾ってあって、若干いつも、私たちの家の方に飾ってある。
邪魔で自宅に駐車できない。
そんな事が続いた。
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