第3話 魔法を学ぶ
この世界で生きていくことを決めた俺は、ティアに魔法について尋ねることにした。
「魔法についてやここで生きていくにはどうしていけばいいか教えてくれないか?」
今の俺は何も持っていないし、何もできない。ひとまずはティアに頼ることにして、何とかこの世界で生きていけるようにしなければならないと思う。
「いいわよ。とは言ってもここにいる限りは面倒は見てあげるけど?」
何とも優しいことを言ってくれるティアに俺は不思議な気分になる。しかし甘えてしまうわけには行かないだろう。現状でもかなり甘えてしまっている状況で、これ以上ってのは俺としても何とも言い難い気持ちになる。
「いや、俺もできることは増やしておきたいんだ。それにいつまでもティアに頼り切ってここにいるわけにはいかないだろう?」
少なくとも俺は面倒をかけっぱなしになるのは嫌だった。例え相手が吸血鬼だろうと、見た目は少女のヒモになるつもりはない。それに魔獣という存在がいる以上、自衛の手段は持っておきたい。いつまでも守ってもらっているのはカッコ悪いしな。
俺はこれらの考えをティアに伝える。
「むぅ」
見た目少女と言ったあたりで少し不満そうな声を上げるティア。しかしそれ以外は納得してくれたようだ。
ティアの話によると、魔法とは、魔力と呼ばれる体内や自然にあるエネルギーのようなものを使ってイメージした現象を引き起こすものだそうだ。そのため、まずは魔力を感じ、流れを理解する事が必要らしい。また、魔力を感じられるようになった後、それを手足のように動かせるようになれば魔法を使えるようになるとのことだ。
「魔力ねぇ」
生まれてこの方、そのようなものは感じたことのない俺である。そもそも、俺に魔力があるのかどうかすら不明だ。
「あなたには魔力があるわ。そもそも魔力を持ってない生き物なんていないもの」
「それは魔法がない世界から来た俺でもか?」
「ええ、あなたはいい魔力を持っているわ。おいしかったもの」
「……」
ティアが言うおいしかったって俺の血のことか? ということは魔力は血中にあると考えればいいのか。そう思い、俺は血管をイメージして目を閉じる。すると体に今まで感じたことのない違和感のようなものを感じた。そこで閉じていた目を開けティアに顔を向けた。そこにはとても驚いた表情のティアがいた。
「もう魔力を感じられるようになるなんて……」
ふむ、どうやら魔力を感じられるようになるのは普通は時間がかかるらしい。まあ、できてしまったものはしょうがない。
「魔力を動かすにはどうしたらいいんだ?」
「……そこもイメージよ」
どうやら魔法はイメージさえしたら何とかなりそうだ。なんか最初の無言で考えるのと説明を放棄する判断を下したように見えるのは気のせいだろう。そう言うことにしておこう。
なんだかんだ、体内の魔力について想像力を働かせていたら動かすことに成功した。ティアからはなぜかとても呆れたジト目を頂戴したが。解せぬ。
「なぜもう出来てるのかしら。まあいいわ。次は実際に魔法を使うことね」
もう実践に移れるらしい。ここに来るまでに実に30分の時間をかけた。おかしいか? おかしいな。ジト目の意味を理解した。習得が自分でも早すぎると感じた。きっとほかの人は長い時間をかけて学んでいくのだろう。まあ、再度言うができてしまったものはしょうがない。
ティアに実際の魔法について教わるために住処の外に出た。外に出て周りを見渡すと、少し離れたところに湖が見え、さらにその奥にある森の上に崖が見えた。
「俺が落ちたのはあそこからか?」
つい気になってティアに問いかける。
「そうよ」
よく生きていたな俺。遠目からでもかなりの高さがあるように見える。ティアに感謝だな。
「魔法を打つから見ときなさい」
そういうティアの言葉に意識を戻し目を向ける。するとティアの周りの空気が少し変化した様に感じられた。
ドオオォォォォオオン!!
なんの予告もなくいきなりの爆発音。ティアの前方、湖の上がいきなり爆ぜた。
「えぇ……」
いきなり爆ぜた以外何もわからない。爆発系の魔法だろうか。それもイメージでできることなのだろうか。
「どう? わかった?」
「わかるか!」
「わからないの?」
なぜこちらが今のでわかると思ったのだろうか。しかしティアからはなぜわからないのかがわからないような視線を向けられている。
「何か、初心者向けのはないのか?」
俺はティアの様子に顔が引きつりそうになるのを抑えながら尋ねる。
「そうね。こんなのは?」
ティアがそう言いながら手を前方に突き出した。すると、魔力が手の方に集まっていき、それが火の玉になった。
「なるほど。魔力を集めてからそれを変化させるイメージで行けば……」
そう呟きながら、俺は同じように手を突き出し魔力を集め、それを火の玉にするイメージをした。
ボゥ
俺の手のひらに人の顔くらいの大きさの火球が浮かび上がっている。
「できた」
見事に1発目で成功した。なるほど、ティアがイメージといったのも理解できる。これはイメージ以外の何物でもないな。他に説明のしようがない。
「結局、すぐできるんじゃない」
「ああ、ティアのおかげだな。ありがとう」
「そんなわけないじゃない。言葉で言ってみんながすぐ出来たら、世界は魔法使いだらけになるわ。あなたは何者なのかしらね?」
そう言って悪戯っぽく笑うティア。そんなこと言われてもできちゃったものはしょうがない。これらを今後のために生かすとしよう。
「さあな、さっぱりだ」
とりあえずそう答え、さらに別のイメージをする。そのイメージは魔力を全身に巡らせ体を強化する。いわゆる身体強化だ。
「もうそんなに使いこなしているのね。私の影響かしら……」
「どういう意味だ?」
ティアの最後のつぶやきが気になり声をかける。
「それはね……」
ティアの説明によると大怪我をしていた俺を治すためにティアの力を流し込んだのだそうだ。なるほど、それのおかげで魔力についてすぐに感じれるようになったのかと納得する。
「それでもそんなに魔力を使っても平気そうなのはおかしいわ」
なんでも身体強化をするにはたくさんの魔力を使うらしい。俺はその説明を聞きながら飛んだり跳ねたりしていた。
「そう言われても全然余裕があるんだが?」
まったく疲れが来ないどころかどんどん調子が良くなっていると感じる。イメージの力ってスゲーな。
「そんなわけないでしょう……。不思議な人ね」
呆れと諦め、そして興味深そうにしたティアがそうつぶやいた。そして徐々に楽しくなってきたのか、俺にどんどん新たな魔法を教えていき、俺はそれらをもれなく習得していくのだった。
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