第20話 応援要請

 王都に転移した俺はそのまま続けて王城にいる国王さんのいる場所に転移する。


「うおっ!?」


 俺が急に現れたのに驚いたのかそんな声が聞こえてきた。


「あ、すまん」


 俺はその驚きの声をあげた者に軽く謝るとあたりを見回して国王を探す。転移した部屋にはすでにティアとリースが戻ってきていて、国王はその対面に座っていた。加えてティアは見慣れない少女を膝にのせて座ってお茶を飲んでいる。


「ティア。戻ってきていたのか」


「ええ。あとは騎士たちに任せてきたわ」


「そうか」


 ティアに軽く状況確認をすると俺は国王の方に向き合う。


「国王さん。デルマ侯爵の屋敷の地下に街の半分ほどの大きさの地下空間を見つけた。流石に手が足りない。騎士の追加の応援が欲しい」


「そんなに広いのか?」


「ああ、かなりの広さだ」


「うーむ」


 俺が騎士の追加を頼むと国王は考えるように腕を組んで黙ってしまった。


「少しだけ時間をくれ。調整してくる」


「わかった」


 やがて国王は考え終わったのかそう言って立ち上がると部屋を出て行った。俺は国王にそう返事を返すとリースのそばに座る。


「ところでティア。その子は?」


「この子は王都の何とか侯爵の屋敷の地下に閉じ込められていた子よ。見つけて解放したら懐かれちゃったの」


 ティアは子供の対応に慣れてないのか少し困惑気味にそう言った。


「そうか。名前は?」


「わかんない」


 俺はかがんで少女に目線を合わせて問いかけた。しかし少女は首を振りながらそう答える。


「ティアはこの子に何か聞いたのか?」


「ええ。でもわからなかったわ」


「そうか」


 ティアもすでにチャレンジした様だ。しかし、何もわかってないと。


「これは侯爵達から聞きだすしかないな」


「そうね」


 俺たちは互いにため息を吐いてこの状況を諦めた。そして俺は話題を変えるように声を出す。


「しかし俺はいつまで待っていればいいのか。ウォリック達を待たせてるんだけどな」


 俺がそう呟くと図ったかのように部屋の扉が開く。


「待たせたな。都合がついたぞ」


 入って来たのは国王さんで加えて二人見知らぬ人物が入ってくる。


「やっと来たか。それでそちらの二人は?」


「この二人が部隊長をしている者たちだ。それぞれ三十人ずつの隊をまとめている。こやつらを連れて行ってくれ」


「了解。リョウだ、よろしく二人とも」


 国王さんの説明を聞いて俺は入って来た二人に挨拶をする。


「サンズです。よろしくお願いします」


「シェリルです。リョウさんのお噂は聞いてました。よろしくお願いします」


 俺に続けて二人も自己紹介をしてくれ、流れで握手をする。サンズは髪を短髪にしている好青年って感じの男でなかなかのイケメンだ。対してシェリルは赤みがかった短髪の活発そうな女性だ。二人ともかなり若そうに見えるがその見た目の通りの年齢で部隊長ということはかなり優秀なのだろう。


「この二人の部隊を丸々連れてっていいのか?」


 俺は国王さんに向かってそう問いかける。


「ああ。二人の部隊を丸々連れてってくれて構わない」


「了解。だ、そうだ。準備はできているか?」


 国王さんの返事を聞いて俺は二人の騎士にそう言った。


「準備はできている」


「こちらもです」


 二人は俺に目を合わせてそう言った。


「そうか。じゃあ、行くか。案内してくれ。ティアとリースはどうする?」


「行くわ」


「行くの!」


「わかった。だが、その子はどうする?」


「会話をしているうちに寝ちゃったわ」


「じゃあ、そのまま寝かしておくか。起きるまでには戻ってきたいな」


「ええ」


 俺たちは二人の騎士の案内に従って部隊が集合しているところに向かった。やがて広めの高校の校庭くらいの広さのところに到着する。そこにはすでに集合している騎士の部隊がそろっていた。


「よし、そろってるな。これより私たちはデルマ侯爵領へと向かう。準備はいいなっ!!」


「「「「「はっ!!」」」」


 サンズの呼びかけに対して集合して並んでいた騎士たちが返事を返した。


「おー、すごいな」


 俺はそれを見てそんな感想を漏らした。


「準備は終わっている。もういけるが?」


 シェリルがこちらを見てそう言った。


「了解。じゃあ、行くぞ」


 俺はそう言ってこの場にいる全員を転移の魔法でデルマ侯爵の屋敷の庭に連れて行ったのだった。



_________________________________________



「ここだ」


 俺は呆然としているサンズとシェリルに声をかける。


「ほんとに一瞬なんだな」


 サンズは驚きと共にそう呟いた。加えて騎士たちは慣れないどころか初めてであろう転移を経験して一瞬の間に景色が変わり少しざわついている。


「落ち着かせなくていいのか?」


 俺はサンズの隣でまだ固まっているシェリルに声をかけた。


「はっ。お前たち落ちちゅけ!」


「お前が落ち着けよ……」


 シェリルは慌てたように声を出して噛んでしまい羞恥で顔を赤くしていた。それを見たシェリルの部隊の騎士達は先ほどの驚きのざわめきを落ち着かせほっこりしている。大丈夫か、この部隊。


「戻って来たのか!」


 屋敷の玄関の方から声がかかる。


「ウォリックか。今、応援を連れて戻った」


「助かる。サンズとシェリルじゃないか。よく来たな」


 ウォリック達は顔見知りの様でそれぞれで挨拶を交わしている。しばらく会話を交わしていた三人だがそろってこちらにやってくる。


「そろそろ向かおう。こんな仕事はさっさと終わらせるに限る」


 俺はこちらにやって来た三人にそう言って屋敷に向かう。


「そうだな」


 ウォリックも苦笑して俺についてやってきた。サンズとシェリルも否はないようで部隊の騎士を取りまとめてついてきていた。


「ここだ」


 屋敷の地下へと続く階段がある倉庫の前にたどり着く。


「こんなとこにあるんだな」


「下は広いんでしたよね?」


 サンズとシェリルのそれぞれがそう言った。


「広さは街の半分くらいある。かなり広いし敵もいるだろう」


「警戒しながら進まにゃならんな」


 俺が答えるのに続いてウォリックもそう言った。


「さーて、行きますか。ティア、リース。準備はいいか?」


「ええ、いつでも」


「行けるよー!」


 二人の返事を聞いて俺たちはそれぞれ地下へと進んでいくのだった。

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