第57話 ウカの謝罪?

「どういうことですか?」


 ウカは俺の言葉の意味が分からず困惑した表情を見せる。


「どうもこうも、ティアがウカもついてきていいって言ったんだよ」


 俺は頭に?を浮かべているウカに説明する。


「もし、ティアさんが認めてなかったらどうなっていたんですか?」


 恐る恐ると言う感じでウカがそう聞いてくる。


「どうって、そりゃあ、商業国に強制送還?」


 俺は首を捻ってそう答える。その場合ティアがやっていただろうけど。俺の答えを聞いてウカが身震いをする。


「怖いです。そしてしれっとそんなことを言うリョウさんも怖いです」


 俺とティアはそろって恐ろしいものを見るような目で見られている。


「まあ、そんなことはどうでもいいだろ? 実際問題なくティアが認めたんだし」


 俺はそう言ってウカに落ち着いてもらえるように言葉をかける。


「それは……、そうですけど」

 

 ウカは俺の言葉にウカは渋々と納得したような表情になる。


「ちなみになんですがどういう基準だったんですか?」


「それを俺に聞かれてもな……」


 俺はウカの質問に対する答えを持ち合わせていない。俺自身の基準としては商業国でのやり取りでもう認めていたようなものだからだ。


「ティア、どういう基準だ?」


 そこで俺はティアに直接聞いてみることにする。


「ん? 直観?」


 俺がそう尋ねるとティアは首を傾げつつ、疑問形で答えた。ティアの答えに俺とウカはそろってため息を吐く。俺は相変わらずの様子に、ウカは緊張して損したと言わんばかりだ。


「まあ、気にするな。それよりもウルラ達に何かしてあげたいことがあったんじゃないのか?」


 俺はウカにそう声をかける。


「そうでした!」


 俺の言葉にウカは耳と尻尾をピンと伸ばして反応する。しかし、なんて話始めようか迷っているのか、何やら考え始めた。


「?」


 俺の言葉を聞いていたウルラ達は不思議そうにこちらを見ている。


「どういうことですか?」


 ウルラが代表して近づいてきてそう尋ねる。


「なんかウカが責任を感じてお前たちにしてあげたいんだと。何をするかは知らんが」


 俺はウルラにそう答える。俺の答えを聞いたウルラは疑問顔だ。


「何の責任なんでしょう?」


「ああ、ウカは商業国の政治に関わっていたんだ。その政治に関わっている連中の中からウルラ達にそんなことをしたやつがいたことが許せなかったんだとよ」


「ああ。なるほどです」


 俺の説明を聞いてウルラは納得したような表情を見せる。


「なんで全部言っちゃうんですか!?」


 俺が説明している横で、ウカが抗議してくる。自分で説明したかったのだろう。


「そりゃ、お前がうじうじとなんて話そうか迷ってるからだろうが」


「うっ」


 ウカは言葉に詰まって黙ってしまう。


「ほら、さっさと話してしまえ」


 俺はそう言ってウカの背中を押してやる。ウカは俺に背中を押される形で俺たちが保護した少女たちの前に出てくる。


「えっと、その……。ごめんなさい」


 ウカはその場で謝り始めた。ウルラ以外の子たちがあまり状況を呑み込めずに不思議そうにしている。


「私も商業国の運営者の一人として、あなたたちの状況に気が付けなかった罪があります。このことに対する謝罪はどれだけかかってもするつもりです。ですから、何でも要求してください。できる限り私の力を使って見せます」


 なおもウカは言葉をつづけた。ここまで来てようやくウルラ以外のマイアやエレクトラ、スピカやリグリアも何に対しての謝罪か理解したのだろう。それぞれが「ああ」と納得の表情を浮かべている。


「気にしないでください。もう私たちは救われていますので」


 ウルラがそう言ってウカと目を合わせる。


「私たちはリョウ様に救ってもらいました。それにここに来てからはティア様やマリー様にも。なのでそこまで気にしないでください」


 ウルラの言葉に他の四人も頷いて見せる。ウカはその言葉を聞いて涙目になっている。


「あ、そうだ。商業国から今回の件の賠償金だってよ」


 俺はウルラやウカとのやり取りを聞いてふと思い出し、商業国でもらった金貨の山を収納の魔法から取り出した。


「え?」


 ウルラが金貨の山を見て目を丸くする。そしてウカが「今その話しします?」みたいな顔でこちらを見てくる。


「だから、今回の件の賠償」


「お、多くないですか?」


「主犯の商会の資産すべてだからな」


 ウルラ達は金貨の山と俺を交互に見ているだけの首振り人形みたいになっている。


「ま、全部お前たちで分けていいからな」


 俺はそう言ってウルラ達を金貨の山の前に連れてくる。初めて見る金貨の物量に目を白黒させているウルラ達。そして話の流れをぶった切られて唖然としているウカ。


「お、多すぎます! こんなに受け取れません!!」


 ウルラが即、受け取り拒否を始める。それから続いてほかのみんなも口々に似たようなことを言い始める。


「別に今すぐ全部使えってわけじゃないんだからいいだろ? 持ってけって」


 俺はみんなの反応を見て苦笑しながらそう伝える。しかしウルラ達は納得しがたいような表情をしている。


「わかった。とりあえず預かっといてやるから、必要になったら言ってくれ」


 俺がそう言うと渋々納得したような顔をする。そして存在を忘れられたかの様な扱いをされたウカがしょぼんとしている。


「あー、それとウカ。いつまでそこで縮こまっているんだ?」


 俺はそう言いながらしなだれているウカの尻尾を引っ張った。


「ひぎゃ!!」


 尻尾を引っ張られたウカはそんな声を上げながらぴんと背筋を伸ばす。


「何するんですか!?」


 涙目で怒りながら抗議してくるウカ。俺はそんなウカを見て、またからかう。そんなやり取りがしばらく続いた。


 そしてそれをティアやリースが楽しそうに眺めているのだった。

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